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第55話
「お前と俺は異母兄弟だ。お前の実の母はお前を忍の道へ入れたくないがあまり、父を騙し、お前を小さな村の子のない夫妻に預けた。幼い俺に与えられた成人への試練が、弟であり――鬼の血を引く、お前を殺すことだったのだ」
「おに、の血?」
つい、と目を細めた輝夜が頷く。
「俺の、俺たちの父は鬼と呼ばれる存在だった。この琥珀の瞳を持ち、一度に十人を相手に立ち回った。俺が鬼丸と呼ばれるのはその名残――恐ろしい程に強い男だった。俺がお前を手に掛けることが出来なかったため、俺の代わりに、殺されてしまった」
「そん、な……待ってくれ、わけがわからない……」
そんな大事なことをなぜ黙っていたのかが、竜巳には分からなかった。いやな汗が全身からぶわりと噴き出す。
狼狽する竜巳を他所に、輝夜はさらに告げる。
「そして、お前の育ての父母を殺したのも、俺だ」
「! なっ、ん、で……!」
「命令だったからだ。母には毒を混ぜたものを飲ませ、父には川で溺れてもらった。だが、お前のことは殺さなかったよ。違う、殺せなかった。情に流されてしまった。俺は未熟だったのだ。――漠然と、いつかことの真相を知り、俺を殺しに来ると思っていた」
「……そんな」
言葉が出ない。
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