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第65話
「な、なあ竜巳」
「全部、本人から聞いた。まだ信じられないけど。でも――この目の色、そういうことなんだろうな」
そっと自分の瞼をなぞる。
竜巳が悲し気に微笑んで見せると、伊織は逡巡した後、小さく、「そうだな」と返した。
「なあ竜巳、しつこいほど言っておくぞ。あいつは、輝夜はお前を本当に大事にしてた。だから、頼む」
「え?」
伊織が頭を下げたので、竜巳は思わず後ずさった。
顔を上げた伊織が、顔を険しくして言った。
「死ぬな。生きてくれ」
伊織は力強く言い放った。ただならぬものを感じた竜巳がたじろぐ。何か言葉の裏に隠されているようだったが、彼の瞳からそこまで推し量ることはできなかった。その言葉を、彼ではなくあの男の口から聞きたかった、と思うのは罪深いことだろうか。
「頼む。生きていてくれるだけでいい。それであいつは……それで報われるはずだ。だから泥水啜ってでも、這いずってでも、生きてくれ」
その懇願に、竜巳は一瞬狼狽して――。
「――ああ、分かった」
その勢いに身を引いた後、しっかりと頷き、小刀を懐にしまいこんだ。
「行くぞ」
「うん」
決戦は近い。
竜巳は唇を噛み締めた。
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