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chapter 01 [ghost house]

 今日で父と家とにお別れだ。  行き先は村外れにある、木々が鬱蒼(うっそう)と生い茂った森の中。ひっそりと建っている三階建ての古びた洋館。皆は幽霊屋敷だと噂している。  それというのも、屋敷は百年以上も前から建っているらしく、人が住んでいるのかいないのかさえも判らない。誰も住人の姿を見たことがないんだ。  そんなだから、過去には肝試しで屋敷に入った人もいる。その人々のことごとくは明くる日から数日間、高熱にうなされ続け、呪われたという話がある。  屋敷の中にあるラウンジチェアがひとりでに揺れたり、青白い人影が窓を横切ったりという目撃証言もあるとかないとか。はたまた屋敷には悪魔が棲みついていて、人間の魂を食らうとか。とにかく、怖い所で有名だ。以来、誰も近づこうとはしなかった。  今朝方、長老から話を聞かされるまでは――。  長老の話によると(くだん)の屋敷の住人が深夜にやって来たらしい。

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