13 / 26

chapter 03 [male]

 誰だろう。ラウンジチェアで女の人がシクシク泣いている。両手で顔を覆っているからどんな人なのかも判らない。  呼びかけても返事はなく、近づいて肩を叩いたその時――。 (ここは――)  僕は目覚めた。  真っ先に僕の視界に飛び込んできたのは天蓋付きの広いベッドだ。  ここは自分のお部屋じゃない。 (――えっと)  何が起きたんだろう。  たしか昨日、村長さんに屋敷へ行くよう頼まれて父様にお別れを告げて、それから――。ああ、そうだ。ここは例の幽霊屋敷。僕は今日から殺されるまでの間、住み込みで働くんだった。 (じゃあ、気を失う直前に見た男の人は?)  オリーブ色の目にブロンドの髪。とてもハンサムな男性。  あの人、僕、知ってる。夢の中に出てくる男の人そのままだったから。 (ううん。そんなわけないよね。きっとまたあの男の人の夢を見たんだ)  そして夢の中の出来事を現実にあったことだと思い込んだだけだ。 (それよりも僕はいったいこのお屋敷で何をすればいいんだろう)

ともだちにシェアしよう!