12 / 26

chapter 02 [sweet voice]

 男の人の声は低い。だけどとても優しいものだった。まるでベルベッドに包まれているかのようにあたたかで……心地好い。 (あれ、あれれ? でも僕、この人知ってる気がする……) 「あなたは――」  誰だったっけ……。  口を開けば、両瞼に口づけが落とされた。 「……ん」  それはとてもあたたかくて、優しい。それにお腹の奥がくすぐったい。だから僕はおかしな声を出してしまう。 「自己紹介はまた明日にしよう。おやすみ、ウィル。良い夢を――」  不思議なのは男の人の声と一緒に意識も遠くなっていくこと。  僕は言われるがままに目を閉ざした。

ともだちにシェアしよう!