11 / 26
chapter 02 [encounter]
「あの――」
せめて箒 とチリトリくらいあれば――。
どう掃除すればいいのかサキュロンさんに訊 こうと振り返ったら、もう誰もない。
「あのっ!」
ぼうっとする頭のまま、急いでサキュロンさんを追いかける。
もつれる足でお部屋を出て、螺旋状の階段を駆け下りる。
だけど、僕の体は甘い香りのおかげで頭と一緒で上手く動いてくれなくて、右足が左足の行く手を邪魔しちゃったんだ。
「うわわ……」
体が仰け反る。その時だ。ふいに力強い腕が伸びてきたと思ったら、足が宙に浮いている。
何事かと見上げれば、そこにはとてもハンサムな男の人がいたんだ。
麦畑を思わせるような金髪に、オリーブの瞳。すっと通っている鼻筋。それから……弧を描いた薄い唇。
その姿が蝋燭の炎に照らされて神秘的だ。お伽噺の中に登場する王子様みたい。
うっとりして見惚れていると、男の人の唇がゆっくりと開いた。
「気になって来てみれば案の定。様子を見に来て正解だった」
ともだちにシェアしよう!