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chapter 02 [encounter]

「あの――」  せめて(ほうき)とチリトリくらいあれば――。  どう掃除すればいいのかサキュロンさんに()こうと振り返ったら、もう誰もない。 「あのっ!」  ぼうっとする頭のまま、急いでサキュロンさんを追いかける。  もつれる足でお部屋を出て、螺旋状の階段を駆け下りる。  だけど、僕の体は甘い香りのおかげで頭と一緒で上手く動いてくれなくて、右足が左足の行く手を邪魔しちゃったんだ。 「うわわ……」  体が仰け反る。その時だ。ふいに力強い腕が伸びてきたと思ったら、足が宙に浮いている。  何事かと見上げれば、そこにはとてもハンサムな男の人がいたんだ。  麦畑を思わせるような金髪に、オリーブの瞳。すっと通っている鼻筋。それから……弧を描いた薄い唇。  その姿が蝋燭の炎に照らされて神秘的だ。お伽噺の中に登場する王子様みたい。  うっとりして見惚れていると、男の人の唇がゆっくりと開いた。 「気になって来てみれば案の定。様子を見に来て正解だった」

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