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はじめてのおとまり

涼太の家は、公園から、車で五分程の閑静な住宅街にあった。四世帯が入居する二階建てアパートの一階。2DKの間取りに一人暮らしをしているらしい。 彼の几帳面な性格通り、部屋はとても綺麗に片付けられてあった。 「頂きます」 両手を合わせちゃんと挨拶をして。 夕飯は蓮の好きな手巻き寿司。 ひきわり納豆、ツナマヨ、卵焼き、胡瓜、ウィンナーなど、具も蓮の好きなものばかり。 「りょうにいに、つぎは、ウィンナーときゅうりまきまきして」 蓮は、涼太に甘える事をすっかり覚えてしまった。 (駄目、失敗しても、自分でしなさい!) 俺なら、泣かれても、息子の為を思い、そういうが・・・・。 「いいよ。次は、何を巻く?」 でもまぁ、こうして涼太が楽しそうに、蓮の世話をしてくれているんだ。 俺が口を挟む事ではないか。 「パパ、あ~んして」 蓮に言われた通りにすると、涼太がさっき巻いてくれたものを、ぐいっと口の中に押し込まれた。 「おいしい!?」 「うん、おいひぃ」 「パパは、りょうにいにに、あ~んしないの?」 蓮がまた天使の様な無垢な顔で、悪魔の様な質問をしてきて、危うく海苔を喉に詰まらせる所だった。 むせった俺に、涼太が素早くお茶を飲ませてくれ、、背中を擦ってくれた。 「真生大丈夫?」 「悪いな、有難う」 「ゆっくり食べないと」 俺にまで甲斐甲斐しく世話を焼いてくれる涼太。何気に目が合いーー。 「涼太!?」 彼の顔が耳まであっという間に真っ赤になった。 それを隠そうとしてか、涼太はすぐに顔を逸らしてしまった。 同じ男とは思えない、可愛い仕草に、しばし見惚れていると、 「僕、納豆苦手だけど食べてみたいな」 遠慮しがちに涼太に言われ、 「なっ、納豆ね・・・ごめん、ぼっとしていて」 年甲斐もなく狼狽えてしまった。 慌てて作ってやると、その小さな口を開け、かぷっと、嬉しそうに食べてくれた。 「無理すんなよ」 「大丈夫。真生が作ってくれたものだもの、美味しい」 蓮と涼太、二人の笑顔を見ているうち、つい本音が出た。 「何か、いいなぁ・・・こうしてメシ食うの。俺、あんまり家にいなかったからなぁ、こういうのが、家族団欒っていうんだろうな」

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