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幼馴染みの急変
リビングから賑やかな声がしていた。どれも、聞き覚えのある声ばかりで。まさかと思いながら顔を出すと、
「おかえり、真生ちゃん!ずっと、待ってたんだよ」
「久し振り真生!」
「お前ら、全然変わってないなぁ」
そこにいたのは、悪友ともいえる、幼馴染みの連中で。
「お前ら何で?佐野兄弟の家で呑んでいたんじゃ・・・」
「葵がさぁ、真生ちゃんがいないと寂しいみたいで、蓮くんだっけ!?息子さんいて、来づらいなら、逆に、真生ちゃんちに行こう!みたいになって押し掛けたんだけど、昨日から帰って来ないっておばさんから聞いて・・・何、もう新しい彼女作ったの?」
相原の顔がニヤニヤしている。
隣に座る、同じ顔をした、デカい図体の佐野兄弟もニヤついている。
昔と、全く姿形が変わらない三人。
話し方も、素振りも昔のまんま。
「彼女じゃなくて、友達だよ。仕事先で知り合った男性!」
―ー本当は、彼氏なんだけど。年下の大切な恋人・・・・
「何だ、面白くない」
「面白味がなくて悪かったな」
相原に悪態をつかれながら、葵がこの場にいない事に気が付いた。
「もしかして、彼氏・・・捜している?」
「アホか」
「だって、ラブラブだったじゃん、葵と」
「そう、そう!」
「なんだそれ」
「傍目から見たらお前ら、長年連れ添った夫婦みたいだったんだぞ」
「くそ真面目な優等生の葵に、文句一つ言わず、ただ黙って側にいただろう?」
「その勢いで、そのままくっついて、同性婚を挙げるんじゃないかってクラスのみんなで噂していたんだよ。それなのにさぁ、進路別々になるし・・・今からでも遅くないから、葵と結婚しろよ。クラスのみんなには俺から声掛けるから」
三人とも言いたい放題だ。
頭がガンガンしてきた。
「パパ、えんちぉうセンセいた!!」
蓮が急に走り出した。
「蓮、お帰り」
葵は、台所から顔を出して、懐に飛び込んでいった蓮を笑顔で抱き上げた。
流石は、幼稚園の園長先生だ。エプロンがこれまた良く似合う。
「どこにお出掛けしていたんだ!?園長先生、寂しかったよ」
「えっとぉ・・・」
子供は無垢だから、あまり深く考えず、思った通りの事を素直に言ってしまうものだ。
蓮、ダメだぞ。
涼太の事は内緒!!
何聞かれても、素直に答えちゃダメ!!
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