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償い

「パパ、行ってくるね」 涼太に作って貰ったお弁当を園カバンに詰め、蓮は、朝からニコニコ、元気いっぱいだ。 「真生、ちゃんと大人しく寝ててね。お昼に、一旦、戻って来るからね」 熱がなかなか下がらず、起き上がるのもしんどくて、横になったまま手を振った。 バタンと、ドアが二回開閉する音がして、バタバタと涼太が走って戻って来た。 「忘れ物?」 「うん」 そう言うと、布団の隣に腰を下ろし、体を前に倒してきて、チュッと口付けを唇にしてくれた。 「行ってきますのキス、まだだったから・・・」 恥かしいのか、視線は合わせてくれなかったけど、それがまた、可愛い。 だから、痛くて動かない腕を必死に伸ばし、涼太の事を抱き締めてやった。 「ま、真生!!」 そんなに驚かなくてもいいのに。 「その・・・抑えがきかなくなるから・・・」 顏もみるみる赤くなっていく。 無性に彼に甘えたくなった。 「涼太の好きにすればいい。俺たち、恋人同士だろ?」 首元に舌を這わせ、べろっと舐めてやると、ゆでたこの様になった。 「真生、熱のせいで、おかしくなった?」 「多分・・・」 くすくす笑いながら、彼の体がゆっくりと離れていった。 「僕だって、毎日でも、真生の事を抱きたいよ。宮尾さんが付けたそのキスマークが見えなくなるまで抱き潰したい」 「涼太・・・お前・・・」 「もともと抱かれる方だったから、かなり嫉妬深いのかも。一回焼きもちを妬くと、歯止めがきかなくなる」 「ごめんな、悪いのは俺なのに」 涼太は無理して笑ってくれた。 本当にごめんな。 いっぱい、いっぱい、傷つけて・・・。 「りょうにいに、まだぁ!?」 玄関から聞こえてくる蓮の声に、 「じゃぁ、行ってくるね」 足取り重く、出勤していった。

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