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涼太の家族

「兄がいた話しは、前にしたよね!?両親に溺愛され、我儘し放題。悪い事をしても、障害があるから仕方ないと、兄の事は怒らなかった。その結果、少しでも気に入らなければ、キレて暴れ、思い通りにならなければ暴力で従わせる――何回も補導され、札付きのワルに成長してしまった。それでも、両親は兄を怒る事は一切しなかった。いや、出来なかった・・・家庭内暴力で、兄は、完全に両親を支配下に置いて、僕や未紗にも暴力を振るうようになって、挙句の果てに、当時まだ、小学一年生だった未紗に売春まで強要して・・・僕は、相手の男をビール瓶で殴って、妹の手を引っ張り、裸足のまま、その場から命からがら逃げだした。近所のコンビニに助けを求め、警察に保護され、児童相談所に収容された」 涼太の頬を幾筋もの涙が流れ、その度、手でゴシゴシと拭っていた。 俺は、小刻みに震える彼の肩をそっと抱き寄せた。 「真生、ありがとう」 少しだけ笑顔を見せてくれた。 「兄たちが亡くなった日、何があったか、17年前は、警察も、相談所の職員も、箝口令が敷かれ誰も教えてくれなかった。今の名前に改名して、生まれ故郷より遠く離れたこのみろく市内の養護施設に移ったんだ。ようやく、最近になって、ネットで見付けたんだ。当時の新聞記事や、雑誌の記事――それを見て、改名した理由やここに来た訳を理解したんだ」 涼太が携帯の画面を見せてくれた。 そこには、想像を絶する凄惨な事件の記事がアップされていた。

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