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びっくりして顔を上げる。
気まずそうに目を逸らされ、手の平が顔にベタっと押付けられた。
見んなってことかな。
珍しい反応にちょっとだけ嬉しいような。
いつの間にか涙は止まってて。
「泣くな…困る…ノンケなのに酷いことした…悪かった」
全くこっちを見ない。
でも、ちゃんと伝えようとしてる。
「ううん…泣いてばっかでごめん…」
上目遣いで言えば苦笑された。
「え」
「バカじゃねぇの…お前が泣いたの俺のせいだろ…何で謝ってんの。お前マヌケだろ…」
顔に手が添えられる。
撫でる手が気持ちいい。
逆の手で前髪を面倒くさそうにかきあげるのにドキッとする。
「キスさせろ」
「はあ!?」
「おら、顔上げろ」
「待って!待って、キスって何で!?俺、女の子が…」
「関係ねぇ…俺の言うこと聞けねぇの…?」
「え、でも…っ…」
男同士じゃん、てかキスって、そんなことする間柄でもないじゃん…。
でも、いまさらって感じもする。
強い視線に射抜かれる。
やばい、心臓痛い。
押し黙ったのを肯定と取って前振りなくいきなり強引に唇を奪われる。
舌が問答無用に侵入してくる。
「んっ…んん」
初めて男とするキスは女の子としたキスよりも一番気持ちが良かった。
口の端から唾液が流れて行くのが分かる。
やばい、気持ちいい…溶ける。
目が虚ろになってトロんでくる。
一度離れた舌をすぐに俺を探して絡めてくる。
息が苦しくなってくる。
俺は成海の背中を叩く。
やっと離してくれる。
「はぁ…はぁ…長いって…くるしっ」
「いいな、その顔…そそる」
口を流れる唾液を拭って舐める。
「え、やめろよ、サカるなよ!?」
「しないよ」
そういい、不機嫌そうに俺の頭を撫でた。優しい。気持ちいい。
俺は思わず成海の腕を掴んで頬にすり寄せた。
表情が固まる成海を見て、後悔した。
やってしまった。
セフレなのに好意を持ってしまったこと、嫌がられるかも。
「好きなのか」
「え?」
「撫でられるの」
「あ、あぁ!う、うん!」
何だ…びびった。
「…お前、さっき女とか言ってた?」
「え…あぁ、うん」
「別れたら。…人気者の本田くんは男ともヤるんだって、別れ理由にされるかもな」
え?あ、そっか…こんなことしてるもんな。
そろそろケジメつけなきゃな。
「え、今日…?」
「ふーん。別にいいけどな。女とヤッてようが」
そう言われて悲しくなった。
成海は…何にも感じないの?
そりゃ、そうだよな、俺はセフレだし…。
でも俺は少なくともショックを受けた。
泣きそうになるのを堪える。
「…成海は…どうなの、昨日の人とか…」
「あ?…あー…あれはもういい、他も切る…反応も同じでつまんねぇしな。…目の前に反応いい奴いんのに…他なんか探すか。…呼んだら来いよ。次は気持ちいいのしてやる」
「う、うん…」
なんか、嬉しいような、嬉しくないような。複雑だ。
「俺、もう、行く。今日はこれだけにして、ほんとごめん…」
「…は?別にいいけど」
トイレの鍵をはずして外に出て逃げるようにその場を離れる。
その少しの間、泣きそうな目を一瞬成海に見られてしまったような気がする。
「あ…?」
動揺した成海を見てみたかったけど、さすがに顔を合わせるのはもう勘弁してほしかった。
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