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第2話 特待?

一年前。 ある夏の暑い日。 零は朝早くから地上に舞い降りて、いつもの様に業務をこなしていた。 彼等の仕事は死者の魂を天界の入り口まで送り届ける事。 今日担当する死亡者は5人。 零は上着のポケットから案内リストを取り出した。 リストには、本日死亡予定の人間の顔写真・名前・性別・年齢・死亡時刻・死因・天国行きか地獄行きかが記されている。 天国と地獄では、天界の入り口が異なるからだ。 顔写真・年齢・性別が記されているのは、同姓同名の人間を間違えて天界の入り口に導いて仕舞わない為の予防策だ。 『後1人案内すれば今日の業務は終了だな。』 零は独り言を呟きながら、リストの最後のページを開き写真に目を落とすと、愛らしい笑顔が零の視界に飛び込んで来た。 彼は一瞬にして目を奪われ、心がざわめいた。 零は自分がそんな感情を持ち合わせていた事に戸惑いを覚えた。 この気持ちはなんなんだ? 今までにこんな事は一度も無かった。。 きっと疲れが溜まっているからだ。 明日から休暇でも取るか。 零は自身にそう言い聞かせ、湧き上がって来る不確かな感情から目を背けた。 気を取り直し、再びリストに目を通した。 北条 壱 (ほうじょう いち)・男・二十歳・3日後・病死・天国行き・【特待】 死亡時刻と最後の二文字を見て眉をひそめた。 通常なら、死亡時刻の少し前に対象者の元へ出向くことになっているのに3日後? それだけでも稀なケースなのに【特待】とは。。 一体どうゆう事だ? 【特待】の話は以前にも耳にした事は有ったが、ただの噂話だと思っていた。 一度天界に戻って上司の三十三に確認すべきだな。。 零が踵を返すと、其処には後輩の六(ろく)の姿が在った。 『六!お前こんな所で何してるんだ?今日は事故現場に行ってる筈だろ?』 すると六は泣きそうな顔をしながら零に頭を下げた。 「零先輩。すみません。【特待】の件ですが。。彼は前世で徳を積んだにも関わらず、現世で若くして亡くなるので神様の配慮で特待扱いになったそうです。」 『そんな話聞いていないぞ。』 六は答えを言い淀んだが、言わなければ余計に叱られると考え、事実を伝える事にした。 「えっとですね。。事前に零先輩に伝える様に言われてたんですが。。』 『ですが?』 「えへっ。忘れちゃってました。」 六は舌をペロリと出し、零にそう告げた。 『お前!』 「本当にすみません!じゃあ。。俺、事故現場に戻りますね。零先輩、健闘を祈ります!」 六は言うが早いかその場から逃げる様に立ち去った。 零は呆然としながら六の後ろ姿を見送った。 『参ったな。。今日から3日間ずっと彼の傍に居なきゃいけないのか。。六の奴。天界に戻ったら覚えてろよ。』 零は額に手を当て大きな溜め息を一つ付いた。 しかし、直ぐに気持ちを切り替え、彼の居る病室へと歩き出した。。

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