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第7話 壱の願い事。

それから3日の間、壱はとても幸せそうだった。 零は彼の笑顔を見つめながら、このまま彼を連れて何処かに逃げたいとさえ思った。 しかしそんな事をすれば壱は地獄に連れて行かれ、転生出来なくなる。 零は彼を見送る事以外、自分には何も出来はしないのだと良く分かっていた。 旅立ちの時が近づいていた。 壱はベッドに横たわり、彼の傍に零と六が居た。 「壱。この3日間誰もお見舞いに来なかったけど、、家族は?お別れしなきゃいけないのに誰も呼ばなくて良いの?」 六が心配そうに尋ねた。 「うん。父さんは俺が小さい時に亡くなってるんだ。母さんは。。」 『言いたくないなら無理に言わなくて良いんだぞ。』 壱の頭を撫でながら零が優しく言った。 「大丈夫だよ。母さんは別の病院に入院してるんだ。叔父さんは仕事で海外に行ってるって言うけど、本当は俺が病気だったせいで、心も身体も参ってしまったんだ。」 『。。。』 「もし俺が目の前で去るのを見たらきっと母さんは耐えられない。。」 『そうか。。』 「ねえ。3つの願い事ってまだ叶えて貰える?」 「うん。何?言って!叶えてあげる!」 六が嬉しそうに壱に尋ねる。 「俺が居なくなっても母さんに悲しまないで欲しい。いつも笑顔でいて欲しいんだ。」 「えっ。。」 予想外の願いに六は返事に詰まった。 「無理だよね。。」 『他には?』 「有るけど。。これも叶わないって分かってるから。」 『言ってみて。』 「来週ね。俺の地元で花火大会があるんだ。零と一緒に行きたかったなって。。」 『。。。』 「それとね。ずっと一緒に居られたら良いのになぁって。。」 壱が話し終えると零が再び口を開いた。 『ごめんな。願いを叶えてやる事が出来なくて。』 「気にしないで、俺は2人に出逢えて幸せだったよ。」 『俺達もだ。お前の事忘れないから。』 零はそう言うと、壱を強く抱き締めた。 「うん。ありがとう。ねぇ。零。俺達また逢えるかな?俺なんだか凄く眠いんだ。。」 零と六の瞳から涙が溢れた。 『ああ。俺が抱き締めているから、俺達がまた逢う日まで。。それまでゆっくり眠れよ。』 「うん。。またね。おやすみ。」 「ピーーーッ。」 壱が目を閉じるのと同時に心電図のフラット音が室内に鳴り響いた。 零は壱を抱き上げ、六と共に天界の入り口へと歩きだした。 入り口に到着すると三十三の姿が在った。 六が彼の耳元で何かを囁くと、三十三は黙って頷き、壱を抱き上げ扉の向こう側へと消えて行った。。 この日が壱と零の永遠の別れとなる筈だった。。

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