11 / 13

第11話 花火大会の夜に。

『壱。起きれるか?』 「ごめん。俺寝ちゃってた?」 『腰辛くないか?』 「少し。」 『無理させたからな。』 2人は頬を赤らめ照れ笑いを浮かべた。 『よし。行くか!』 「え?何処に行くの?」 『今日お前の地元で花火大会がある。一緒に観たいって言ってたろ?』 「覚えていてくれたの?」 壱は嬉しくて胸が踊った。 『ああ。』 零は壱を抱き上げ地上に降り立つと、目の前に一軒の家が。。 壱は驚きの余り思わず息を呑む。 「ねえ。此処ってまさか。。」 『お前の実家だ。お母さんが家に戻って来てる。』 「どうして?」 『どうしてって。。体調が回復して退院出来たからだ。なんだ嬉しくないのか?』 零は不思議そうな顔をして壱に尋ねた。 「そうじゃなくて。もしかして。。俺が死んだ後、ずっと母さんを見守っていてくれたの」 『ああ。何だ。その事か。特別な事は何もしていないぞ。ただ元気かどうか偶に様子を見に来てただけだ。』 「零。ありがとう。。」 『壱。一つお前に言っておかなければならない事が有る。』 零は申し訳なさそうな顔をして、話を続けた。 『お前は生前に逢った人達の前に姿を現わす事が出来ない。』 「えっ?それじゃあ。。」 『そうだ。お母さんに会っても、お前の姿を彼女に見せる事は出来ないんだ。。すまない。』 壱は首を横に振り零に言った。 「謝らないで。例え母さんに俺が見えなくても、逢えるだけで充分だよ。零、ありがとう!」 『そうか。じゃあ行くか。』

ともだちにシェアしよう!