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 寒さにかじかむ手に息を吹きかけ、キョロキョロと辺りを見回していると急に強い力で腕を掴まれ、強引に暗い路地裏へと引きずり込まれた。 「君、可愛いね。ねえ、おじさんお金いっぱい持っているんだけど、どうだい?」  何を勘違いしたのか、ちょび髭を生やした太ったサラリーマンが鼻息荒く京一の体に手を()わせた。腐った魚のような体臭とアルコール臭に涼太は思わず眉をしかめ顔を横に向ける。 「ふざけんな! 俺は体なんか売ってねえし男だ! 他を当たれよ、おっさん!!」 「なら尚更嬉しいなぁ。さっきからずっと見てたんだよね。寂しそうな顔でウロウロして、まるで迷子の子供みたいで良いなって思ってたんだ。お陰でほら、おじさんの息子が、こんなに元気になっちゃったよ」  ゴリッと下半身に硬く勃起した熱い男性器を当てられ耳の中をぴちゃぴちゃと舐め上げられるという行為に、恐怖と気持ち悪さを感じて背筋がゾゾッとする。 「汚いもん、くっつけんじゃねえ!! 放せよ!!」  一発殴ろうと涼太は拳を振り上げる。  だが、男は素早く彼のジーンズの中に汗ばんだ手を侵入させ、柔らかいままの男根を強く握り締めた。 「ひぎぃっ!?」 「大人しくしてないとこれ、握り潰しちゃうよー。それでもいいのかな?」  涼太は体をカタカタ震わせ弱々しく「止めてくれ……」と呟く。男はニンマリといやらしく(わら)った。 「気持ちよくしてあげるよ。すぐ終わるからいい子にしててね」  ベルトが外されていないジーンズを乱暴な手付きで一気に膝下まで下ろし、男は地面に膝をつくと彼のボクサーパンツを口に食みゆっくりと焦らすように脱がした。  彼のダビデ像のように美しいペニスに息を吹きかけると、腹を空かせた獣のように容赦なくむしゃぶりいた。  気色の悪い男に自身を唾液まみれにされ玩具のように弄ばれている事が受け入れられないまま、涼太は嗚咽が込み上げてくるのを自身の指を噛むことによって我慢した。 「ん、ぢゅぷ、ちゅっ、ぐちゅっ……うーん。これじゃ全然駄目だね。しょうがないなあ」  男はつまらなさそうに縮んだままのペニスをグニグニと左手で弄りながら、右手でポケットの中を(まさぐ)る。  掌サイズのピルケースを取り出すと中に入った桃色の小さな錠剤を手に取ると涼太に飲むよう促した。 「ほら、お口開けて。お薬飲もうね。あーん」  涼太は口を固く閉ざし、嫌々と首を横に振りながら弱弱しく男の体を押し退けようとする。 「……言う事聞かない悪い子にはお仕置きだよ」  男は涼太の亀頭の先に爪を食い込ませると勢いよく引っ掻いた。  自身を襲った壮絶な痛みに声もなく涼太は悲鳴を上げる。男は芋虫のように太い指を喉の奥へと()じ込んだ。 「ぐっ!? う、げぇ」 「これ以上痛いの嫌だよね。だったら、ちゃんとゴックンしなさい」  男は唾液の付着した手で涼太の口を塞いだ。苛立ち始めているのかペニスにまた爪を立て圧をかける。  涼太は目を白黒させながら錠剤を嚥下した。 「良い子だ。じゃあ、下のお口からも飲もうね」  排泄器官としてしか扱われたことのないアナルに、いきなり唾液が付着しただけの太い指が侵入してきて錠剤をぶち込んだ。  途端に涼太の視界は一面赤く染まる。 「ぁあ゛あぁ゛あ!? 嫌だ!! やだ!! 離せ! 触るなぁ……痛い」  濡らしたわけでも、ましてや指が入るように十分解されてもいないアナルは切れ、地面にポタポタと血を滴らせた。 「はあ、はあ、大丈夫だよ。最初の内はみんな痛いって言うんだけど、お薬が効いてくると女の子みたいにおちんちんが欲しくて堪らなくなるんだ。自分のお尻の穴を弄りだしちゃうぐらいに、ね」  男信じられない言葉に眩暈がする。プライドをズタズタにされ、自分の意志とは関係なく涙が次々に溢れ、零れ落ちる。 「京一、京一……」  涼太は蚊の鳴くような小さな声で愛しい男の名前を何度も何度も口ずさんだ。 「恋人の名前かな? 駄目だよ。呼んでも来ないから、諦めなさい」  男は涼太の濡れた唇へと顔を近付けていく。 「それ以上、涼太さんに触んないでもらえる? おっさん」  夜のネオンに負けないぐらいキラキラ輝く金髪をハーフアップにし黒のトレンチコートに身を包んだ美丈夫がいきなり現れると男の頭を鷲掴み、涼太から引き剥がした。  男は蛙が潰れたような醜い声を上げて地面に転がった。 「京一?」  男は微笑みながら涼太の氷のように冷たく冷え切ってしまった手を、黒い皮の手袋をはめた手でそっと包んみ込んだ。 「そうですよ、涼太さん。お久しぶりです。迎えに来ましたよ」 (――昔のように髪が黒く短くなくても、ピアスやアクセサリーを身に付けて派手な格好をしていても、その笑顔だけは変わらなかいんだね。ああ、本当に、本物の京一だ。見る度に穏やかな気持ちになれた大好きなあの笑顔が今、目の前にあるんだ)  張り詰めていた緊張の糸が切れたからだろうか? 涼太は京一の胸に体を預けると静かに意識を失った。 「涼太さん」  京一は血の気が失せ、涙の跡が残る頬を撫で触れるだけの口付けをした。  涼太の体が冷えてしまわないように自身が纏っていたトレンチコートをかけてやり、そっと抱き上げた。
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