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「っ!! ……ぐっ……あ゛!?」  京一は涼太が呟いた睦言と愛撫に驚き、思わずイキかけてしまうが、腹に力を入れ留まる。 「……やって、くれるじゃないですか。っ!? なら、こっちももう手加減はしません、よ!」  彼は涼太の細い腰を両手で掴むと先ほどの動きからは想像できないぐらいに激しく腰を打ち付ける。 「やあっ!? そんな事しちゃ!! ああ、大きくしちゃ、らめぇ! ……ひんっ!!」 「涼太、さん。涼太、涼太……っ」  二人の呼吸がどんどん上がっていき、涼太の体全体が痙攣し始めた。 「やっ、いっちゃ、いっちゃうよお。きょういち、ギュッてして」 「ああ、離さないよ。涼太、愛してる……っ!? 」 「あっ……京一のおちんちん、ブルブルして……やあ、もう無理ぃ!!」 「あ゛っ、イっク。イク、イク! ゔぅ……く、うっ!!」 「……ん、ひぁ。ふああ、ぁあんっ!! ……はぁ……」  涼太と京一は互いの体を強くかき抱いたまま、同時に果てた。涼太は京一の(たくまし)いペニスが腸内で、ドクドクと脈打ちながら体液を撒き散らすのを直に感じた。  心と体の両方を愛される充足感を味わいながら真っ白な世界へと旅立っていった。  その頃志村はというと一人でポテトチップスをやけ食いしながら、ソファの上で横になってバラエティー番組を見ていた。  チカチカと光る自身の携帯機器を手に取り眉をしかめる。 「もしもし先輩。そっちに、涼太さまいますか?」 『志村くん、耳元でバリバリ煩いよ……。安心して涼太さんなら、俺の隣でぐっすり寝てる』 「へー。てことは、よりを戻したんですか、それはそれは、おめでとーございます」  ボリボリとお腹を書きながら、コーラを飲むと牛の鳴き声のようなゲップが出た。 「何て、言うと思いましたか? このヤンデレストーカー野郎。よくもうちの可愛い坊ちゃんに手を出しやがったな」  テレビの電源が切られると室内はあっという間に静かになって、はっきりと電話越しから気味の悪い笑い声が聞こえてくる。 『……おかしな事を言うね。涼太と俺はお互いに愛し合ってるんだよ?』 「涼太さまが、あんたの居場所を知りたいと言った時に周辺を洗いざらい調べ直したんだよ……。そしたら涼太さまの家の会社が倒産させられて、借金塗れになっていたことが分かった。あんたが犯人なんだろ? だから、ご両親はあの方をお前に売ったんだ。転校生が海外留学をしたまま行方不明になった件も本当は、事故なんかじゃなくて裏から手を回して復讐したんだろ?」  志村は立ち上がりベランダの冷たく靄がかった窓のカーテンを閉めた。 「先輩の両親が死んでヤクザに引き取られたっていうのも嘘。ホストっていうのも建前だけ。本当はあんた――外国マフィアのボスの息子で、高校を中退したのも父親に呼ばれて外国にいたから、でしょ」  ポーンという軽やかなリズムと一緒に、どこかのエレベーターの扉が開いた音が聞こえた。 『そうだ。向こうで遊んでた時の女がガキを孕んでギャアギャアうざくて、親父はほとぼりが冷めるまで帰って来るなって俺を日本の男子校にぶち込んだ。そんな時に涼太と出会った。その後は田上京一としてあんた達から認められるように努力して、正攻法で隊長の座を頂戴した。恋人になるまで随分骨が折れたよ。……なのに、あのクソ野郎はいとも簡単に俺の涼太を奪いやがった』  歯軋りをする不快な音と、地を這い蹲るようなドスの利いた声に背筋がゾッとする。 『だから親父に交渉したんだよ。俺が親父の敵の首を取る代わりに、転校生を地獄に落とし(ゴミを片付け)てくれって』  玄関の扉が乱暴に開かれると黒ずくめの男達を従えた京一が高級で質のよさそうなスーツに身を包んだまま、ズカズカと無作法にも靴を履いたまま室内へと入ってくる。  志村はいきなりのことに唖然とし、その場で立ち竦んだ。  きらりと(ひらめ)く刃を手にした京一が彼の目の前までやってくる。その表情は悪戯が成功した子供のようにどこまでも無邪気だった。 「さっきね、涼太に触ったきったねぇ豚を東京湾に沈めてやったとこなんだ。志村ぁ? お前と涼太が使ってる金、それぜーんぶ俺が稼いだ金だって忘れちゃった? つーか、お前1人を消すなのんて造作もないことだって分かんないのかな?」  志村は指一本動かすこともできないまま、氷のように冷たいナイフをヒタヒタと頬に当てられる。 (涼太さまがいつでも帰ってこれるようにとガンガンに暖房をかけておいたのに……随分と寒いな)  志村はブリザードで室内を氷付けにされたようだなと他人事のように思いながら、京一という男に恐怖した。体は悪寒を感じ、ブルブルと震えが止まらない。  それでも手の中で生暖かくなった携帯をギュッと握り締めて、恐怖に立ち向かおうとした。 「――お前の肌を少しずつナイフで削ぎ落として殺そうか? それとも俺の犬どもに輪姦(まわ)されてみる? 何せ、お前が消えれば俺は本当に涼太のすべてを手に入れることができるからな。あいつを薬漬けにするのも、手足を切り落として監禁するのも自由! 死ぬまでヤリ放題できるんだから!!」

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