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6月8日~出逢い⑤~

「あ~、男の一人暮らしだから。あまり片付いてないけど」 「別に俺、気にしないですよ」  笑顔で告げると、森岡は何かを諦めたように細く息を吐き、ドアの鍵を開けた。 「えへへ、おっじゃましま〜す」  見たところ玄関は靴がきちんと並べられているし、廊下に脱ぎかけの衣服か落ちてもいない。むしろ紫苑の部屋の方が汚いくらいだ。  それはともかく、彼の家に上がりこめたのだから、もう猫を被る必要はなくなった。  繁華街で今夜の相手を探していた時から、早く誰かと身体を重ねたくて仕方なかったのだ。  一人は嫌だ。  誰かと一緒じゃないと、夜は過ごせない。 「荷物は適当な所に置いていいから。ああ、シャワー浴びる?」  スーツを脱ぎながらこちらに視線を送ってくる森岡の背中に、紫苑の視線は釘付けになった。薄いワイシャツの向こうに見える、(たる)みのない背中。鍛えている、というよりは、無駄がないといった感じだが、紫苑の情欲をそそるには充分だった。  ――彼の身体に、触れてみたい。  紫苑はその場に背負っていたリュックを落とすと、森岡の背中に勢いよく抱きついた。 「ッ! な、何……?」  その衝撃に驚く森岡をソファに座らせると、紫苑は彼の足下に膝をつく。 「何って、分からない? 俺、あんなにわざとらしく話しかけたのに。下心が無い訳ないじゃん」 「全く分からん」 「お兄さんあまり顔色良くないし、疲れてるんじゃないの? こういうときはセックスでもしてストレス発散しようよ」  困惑する森岡を尻目にベルトのバックルを緩めると、彼はいよいよ焦りを表に出し始めた。 「ちょ、何してるんだ! 子どもがそんなこと――」 「俺もう十八だよ。さっきも言ったっしょ? あ、金は要らないよ。今晩泊めるとこを提供してくれたんだし」  スラックスの前を(くつろ)げ、ボクサーパンツを押し下げる。迷いのない紫苑の手つきに森岡は目を白黒させている。  そんな反応が面白くて、紫苑は彼の中心に顔を近付けた。

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