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6月9日~先手必勝①~
「な、何もそこまでしなくても……って、ちょっと待っ――」
いつまでもうるさい森岡の後頭部に手を回し、ぐいと引き寄せてその口を塞いでやった。
瞠目する彼の唇から吐息が漏れる。
紫苑がそこへ舌を忍ばせようとすると、顔を離そうとされたのでますます彼の頭を強く搔き抱いた。
中腰になった森岡の瞳に焦りが滲む。
「んん! んぐ、ぅぅうんッ!」
必死に抵抗する森岡が紫苑の舌に歯を立ててきたので、紫苑は慌てて口を離す。
「あっぶな。何すんだよ」
「それはこっちの台詞だ! いきなりキスだなんて……」
「駄目なのか? もしかしておっさん、童貞?」
「そうじゃない! そうじゃなくて、昨日も言ったけど紫苑くんはまだ子供なんだから、こういうことはまだ早いんじゃないかってこと!」
「だーかーら、俺はもう十八だっての! 分かんねーおっさんだな。そんなに俺のこと子供だって思うなら試してみろよ」
「試す?」
紫苑は森岡を壁に追いやり逃げ場をなくすと、再びその唇を奪う。
今度は軽く触れるだけのものだったが、森岡はやはり顔を背けてしまった。
「紫苑くん、俺は男と関係を結んだことがないんだ」
「だから何? 俺、テクには自信あるよ」
「あッ、ちょ……触んなくていいから!」
森岡自身をそっと握り、指を絡める。拒まれるより先に身体を感じさせてしまえばいい。
最初はやんわりと刺激する。徐々に硬くなってきて、上下に扱くとようやく森岡の抵抗の手が止んだ。
「し、おん…く……っ」
「俺が今まで何人の男と寝たと思ってんの? がっかりはさせねーよ」
「そんなに、身体を重ねたのか……?」
「俺、こう見えて寂しがり屋なんだよね。誰とでも寝るのは……人肌が恋しいっていうやつ」
紫苑はぺろっと舌を出して、悪戯が見つかってしまった子供のように言った。その瞬間、手の中の昂ぶりが少しだけ硬くなる。
我ながら、このあざとさは天性のものだと思う。
「ぅ…ッ……」
「気持ち良さそうじゃん。ねぇ、俺にもしてよ」
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