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第6話

元々苦手な数学の授業中。 苦手だから集中出来ないとか、そんなことは言い訳にならないくらい急に黒板の字を読むことも困難になって、結空は机に突っ伏した。 嘘……なにこれ? 本当に俺はΩになったのか……!? 息が切れるほど呼吸は浅くなり、体の怠さ熱さに加えて、下腹の下がむずむずと疼く。 腹の中、深いところで何かが起きていた。 股間は完全に勃起して、擦り合わせた自分の内股ですら刺激となって声を上げそうになる。 どうしよ……。 「ん……っ」 お尻、むずむずする……。 指でもいいから突っ込んでかき混ぜたい。 金子と田所の助言も空しく、結空は本格的に発情期を迎えてしまったのだ。 Ω特有のフェロモンが教室をもわっと包み込む。 「これやばくない?」 「うわ強烈」 「俺我慢出来ないかも」 「誰?え、矢萩?あいつΩだったの?」 ひそひそと囁かれていた声が、ざわざわとざわめき立ち、皆の視線が結空に向けられた。 もう無理……。 保健室……。 力なく潤んだ目で教師を見ると、数学教師もまた頬を上気させ結空を見ている。 「せんせ……保健室……」 「あ、あぁ、先生が連れていこう。みんなは保健室へ矢萩を連れて行く間、ちゃんと自習しているように」 尻の奥も下腹の中も、じんじんと疼いて仕方ない。 椅子から立ち上がろうと、尻を椅子から浮かせると、ぬるっとした感触があり眉を潜めた。 何で濡れてるんだ? 漏らした?いや、そんなことする筈ない。 ……俺、これどうなっちゃうの?まるで女みたいだ……。 数学教師がこっちへ向かってくる。 早く楽になりたい。 とりあえず保健室に行けば薬が貰える。 だから、早く、早く……! そのとき教室の引き戸が開き、赤茶色のショートヘアが目立つ素行不良で有名なクラスメイト曽根崎敦(ソネザキアツシ)がずんずんと大股で歩き、結空の二の腕を掴んで体を引っ張り上げた。 「わっ……」 「先生、俺が保健室までこいつ連れてくわ」 「……?」 「曽根崎。なんだお前は。座ってちゃんと自習しろ」 「あ?するわけねーだろ、自習なんか。てめーの顔見りゃわかんだよ。こいつ連れ出してその辺で一発ヤるつもりなんだろ?」 曽根崎は顎を上げて目を細める。

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