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第5話

『今までβだったのに?突然Ωに?へぇ、そんなことあるのね』 そんな訳ない……。 今までずっとβの男として生きてきたのに。 Ωは表では希少種として保護すべき対象とされているけれど、みんな知ってる。裏社会ではαの性欲処理として使われ、孕まされ、子供を産む道具とされていることを。 熱い体で頭だけがさぁっと冷えていく。 (そんなの絶対嫌だ……!) 「違う……俺はβだから」 「そんなこと言われても俺らにはわかるんだ。矢萩、お前からはΩの匂いがする」 「でもΩの発情期ってこんなもんじゃないよな」 「あぁ確かに。Ωのマックス発情期はβにもわかるくらいだから。矢萩、俺らはヒート抑制の薬飲んでるから急に襲ったりすることはないと思うけど、抑制してない奴もいる。その匂い、本格的になる前に帰った方が真剣に身のためだぞ」 「ヒート?」 「あぁ……そんなことも知らないのか?ヒートっていうのは互いが互いのフェロモンに充てられて発情し抑えが利かない興奮状態になることをいうんだ。もしそうなればαだってレイプしたってことになるし分が悪いけど、世間一般的には発情抑制していないΩの方が悪いって叩かれる。それでも俺達は面倒ごとはゴメンだし、将来に関わることだからヒート抑制してるけど、抑制せずにヒートを楽しむ奴もいる。そういう奴らの餌食になるぞって言ってるんだ」 「そんな……。でも俺はβだ。違うって言ってるだろ!」 絶対違う。 そう思いたかった。 結空は二人からふいっと顔を背けた。 そんなことあるわけない。 暑苦しくて外したシャツのボタンを留め直す。 「俺達は忠告したからな」 「強がっちゃってかーわい。俺で良ければいつでも声掛けろよな」 結空は何も言い返せずに、2人の姿を見送る。 金子と田所。あの2人を取り巻く女子がいつもきゃあきゃあ騒いでいる。 αってだけで自然と人が集まるのだろう。とにかくもてるし、よいしょよいしょと持て囃されて。いい気なもんだ。それに自分をΩだと決めつけた。結空はあの2人が嫌いになりそうだった。 けれど、結空の目は2人を追い掛け、視界に写る2人を意識して、熱い吐息が漏れた。 急激な体の変化は3時限目に起きた。

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