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新しい自分
ーーー検査の為に学校を休んだ翌日から、結空を見る周りの目が変わってしまった。
あの後、夕飯を食べて処方された薬を飲んだ。その後副作用である眠気が急激に結空を襲い昨晩はいつもより深く、ぐっすりと眠ることができた。翌朝起きてみると、体は嘘のように軽くなり、発情による動悸や息切れもなく、自分が本当にΩであることを忘れてしまいそうな程目覚めは良かったのだ。
しかし……。
「渡辺、太田おーす、おはよ」
今まで結空が仲良くつるんできたクラスメイトの渡辺と、太田。
これといって秀でたところが特にない穏やかで平凡な二人。結空はこの二人といると落ち着くし、何より気が合い居心地も良かった。
「お、おはよ、矢萩。体は?平気?」
「うん。薬もらってきたし大丈夫だと思うけど。もしかしてまだ匂う?」
「いや、そんなことないとおもうけど……」
太田はうっすらと頬を赤くして苦笑いを浮かべる。
友人である結空が初めて見た太田の表情に胸がざわついた。
何その顔?
なんだかちょっと気持ち悪い。
「え。はっきり言えよ。匂いしてたら俺困る。なぁ渡辺、俺匂いしてる?」
身長165センチの結空が隣に立つ自分より少しだけ背の高い渡辺を上目で見上げた。
目があった瞬間、渡辺はぱっと見てはいけないものでも見ていたかのように視線をそらした。
「……いいの?」
「は?」
「だから……、嗅いでいいのかって聞いてんだよ」
渡辺もまた太田のように少し顔を赤くして結空へちらりと視線を送る。
「いいけど……。……お前らどうしたの?なんか……変。きもい」
気持ち悪いし、理由もわからず急に目をそらされたりすれば、少なからずショックだし傷つく。
「きもいって……仕方ないだろ。今まで身近にΩなんていなかったし、よく考えてみりゃ矢萩は最初からちょっと可愛かったなって思い出して。この前の匂いは堪んなかったし、俺はβだけどその匂いにすごく引っ張られたから……。意識しちゃうんだよ、矢萩のこと。な、太田」
「うん……」
結空が太田にぱっと目を向けると、太田は赤い顔で遠慮がちに、だけどしっかり首を縦に振った。
意識するってどういうこと?
曽根崎みたいに俺とセックスしたいってこと?それとも透のように俺を女みたいに思ってるってこと?
もしかして、今までみたいに、男友達としては付き合えないということ……?
俺がΩだから?
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