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第20話

「もうっ、もうやめろって……!やだっ」 押し跳ねようとする手がとられ、逆に曽根崎の胸に押し付けられる。 「嫌だ?説得力ゼロ」 「ふ、ぁ……」 耳元に息を吹き込まれるように囁かれ力が抜けてふにゃりと腰が折れそうになった。 もうダメだ。流される。 「やりてぇ」 「や、だ……っ」 やっぱり曽根崎には、何か自分をおかしくする能力があるみたいだ。 薬を飲んでいるから他のαには反応しなかったのに、曽根崎にはそれが通用しない。 足許が崩れていくような感覚。 なんで……!? この前みたいなのは絶対に嫌だ!! 嫌がる言葉とは裏腹に、この間のことを思い出す。 頭の中で繰り返し再生されるのは、曽根崎に抱かれ、揺さぶられて気持ちよくなってしきりに喘いでいる自分の感覚。 体の奥を曽根崎自身にガツガツ突かれ、目の前がチカチカとフラッシュするほど気持ちよくて、何度も果てた。 だからといって、決して曽根崎に恋しているわけではないのだ。 体だけの繋がり。 そんなの頭では決して望んでいない。 絶対にごめんだ。 嫌なのに、尻がとろりと濡れた。 「フェロモン駄々漏れでみんな見てる。場所変えようぜ」 「……っ」 体だけがぐずぐずになって、どうしようもなく唇を噛む。 このままここにいてはいけないと思った。 いくら弱い薬だからといっても、さっきまではそこそこ抑制できていた筈なのに、こんなのおかしい。 「ほら。……お前このままだとここにいる奴らに犯されるぞ」 「誰のせいだよっ……!」 腕を掴まれ半ば強引に立たされた。 制服がぐしょぐしょになる前に教室を出なくちゃと、頭の中では警鐘が鳴り響く。 訳のわからない体の繋がりは、こいつだけで十分だ。一度関係を持ってしまったのだから、今更何を見られたところで構わない。 そう自分に言い聞かせでもしないと、自分の貪欲なΩ性に飲まれて、誰彼構わず加え込んでしまいそうな自分が怖かった。 「結空!」 曽根崎に腕を引かれ足をのろのろと進めたその時、はっと我に返った。 聞きなれた、けれど厳しい声音で名前を呼ばれたからだ。 「透……」 透は険しい表情でつかつかと教室の中、結空の側まで歩み寄る。 「こっちおいで結空」 「……っ」 まるで子供を叱ってるみたいな声だった。 それでもこの声と怖い顔をした透の姿に安堵する。 結空にはこの時の透が、手を差し伸べてくれた女神のように思えてならなかった。 無言で曽根崎の手を腕から外し、透のブレザーに手を伸ばした。 ほっとした結空とは反対に、透と曽根崎の間には不穏な空気が立ち込めた。

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