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第23話

曽根崎の言ったとおり、処方された薬が弱いものだったのかもしれない。 そこへ曽根崎のα独特の匂いに触発されて、距離を取ったとしても、今結空の目の前にいる透だってαだ。 ずっと密着したまま運ばれてきたのだしこんなに近くにいるのだから、結空の体が火照ったままなのは説明がつく。 「結空、座って。ほら、どれがいい?」 けれど、透の清らかさに充てられて、やらしいことがしたいだなんて結空には言うことが出来ない。 大丈夫、落ち着いて、深呼吸、深呼吸。 結空はじんわりと汗をかいた額を手の甲で拭い、折りたたんであるマットへ腰を下ろした。 ビニール袋から出された購買のパンが広げられ、結空は気持ちをシフトしなければ……と視線をパンへと向ける。 「えっと……どれにしようかな……」 目の前にあるのは卵のサンドイッチ、チョココロネ、メロンパン、メンチサンド、おにぎりもある。頭の中でこれはこういうものだという名称の確認作業をしているだけで、どれが食べたいかという食欲に関する欲求まで考えが及ばない。 ……辛い。 結空は無意識にブレザーを脱いでタイを緩め、ボタンを外した。 「腰、揺れてる」 「え、あ、嘘……、ご、ごめんっ」 いつの間にか濡れる尻の奥に刺激が欲しくてマットの上に尻朶を擦り付けていたようだった。 かぁっと顔が熱くなり、耳まで真っ赤になる。 消えてしまいそうなくらい恥ずかしい。 はしたない自分を見せてごめんなさい。 そんな気持ちで胸が苦しくなるが、結空の力ではどうすることも出来ず、結空は膝を立てて膝頭を擦り合わせもじもじと動くことをやめられない。 「透、あの……一人にして……」 体だけじゃなく、粘膜の全てが潤んでいる。目も潤んで今にも泣き出しそうだった。 体の疼きを解消するにはどうしたらいいのか、結空にはわかっていた。 思い出すのは曽根崎に抱かれた自分。荒々しく突き立てられた曽根崎の性器。 最早、自分の指でも、ここにある道具でも、なんでもいいから尻に突っ込んで擦りたかった。 「辛かったら助けるよ結空。どうして欲しいか言って」 「無理……!」 「大丈夫。俺だよ?子供の頃から見てたんだから、結空のこと今更嫌いになったりしないって」 「透……」 そう言われたら信じてしまう。透にはそういう力があった。それもαのなせる技なのか、透の性格が起因しているのかわからない。けれど、子供の頃からそうだった。透の要求は拒めない。 結空はのろのろとタイを抜き、ワイシャツのボタンを全部外した。腰を上げてベルトを緩めズボンと下着をずり下ろす。

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