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第27話

Ωであることが更なる貧困を招き、義務教育を終えると進学の為の資金が無いので、働きながら定時制高校に通ったり通信教育で資格を取ったりするのが常だそうだ。学があってもΩである事を理由に就職出来なかったり、就職できたとしても突然解雇になることもよくある話らしい。 裏社会でΩが食い物にされているという記事も読んだ。 貧困状態にあるΩは手っ取り早く手元に現金が欲しいため、体を売る。Ωを集めた風俗店や売春宿まであり、薬漬けにされ死ぬまで誰かに抱かれて生きる。 また、Ωの自殺率は、α、βよりも遥かに高く、Ωの為の集団自殺サイトまで存在することも覚えた。 そして、そんなΩの苦悩から逃れるにはαと番になればいいと、どの記事も結論付ける。 「はー……」 Ωなんて、いい事何もないじゃん……。 何一つΩであるメリットを見つける事が出来なくて、結空は椅子の上で膝を抱えた。 曽根崎に抱かれ、熱い男根に貫かれたのが死ぬほど気持ちよかった。 透に指で尻をかき混ぜられながら爆ぜたのも、忘れられない程、良かった。 ……Ωなんてただの淫乱だ。 その日の夜はとてもじゃないが夕飯を食べる気になれず、眠れそうになかったけれど、処方された薬を飲んで眠りについた。 翌日、結空は学校を欠席した。 いつも通り朝ごはんを食べ制服を着て鞄を持って家を出たが、学校へ行く気にはなれず、知っている誰にも会いたくなくて学校とは逆の方向へ自転車を飛ばした。 学校をさぼったのはこれが初めてだった。 どうにもやり切れず学校に行きたくない……。結空は不登校生徒の気持ちが少しわかるような気がした。 近くの河川敷にサイクリングロードがあった筈だ。 あそこで自転車をかっ飛ばす! そうだ、サイクリングロードの端から端まで行ってみようか。 暗く沈んでいた表情が明るくなり、初めてする事に胸がわくわくと踊りだした。 「……ぷっ」 少しだけ笑ってしまった。 ちょっと悪いことをしてそれを楽しんでいる自分が可笑しくて。 結空は住宅街外れの公園から行けるサイクリングロードへ出ると北へ向かってペダルを進めた。 自転車は風を切ってぐんぐん走る。 こうしていると、自分が男だとか女だとか、Ωだとか……、そんなことは考えるまでもなくちっぽけなことなんじゃないかと思えてくる。 結空は息が切れるまで漕ぎ続け、やがて見たことのない景色を目にして足を止めた。 無心で走り続け、結構遠くまで来てしまったようだった。

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