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第29話

曽根崎の他に3人いた。 同じような高校生と思われる制服を着用した2人。黒いスウェットを着た男が1人。 恐らく3対1。 曽根崎の素行の悪さは校内で有名だし、きっとケンカだって強いのだろう。 だけど……。 警察に通報した方がいいのか? いや、でも……。 結空の通報が原因で退学なんかに追い込まれた日には、死ぬほどの恨みを買いそうで怖い。 だったら誰かに助けを求めた方がいいかもしれない。 そんな事を考えているうちに、3人の内の1人がまた何か怒鳴り声を上げて曽根崎に殴り掛かった。 殴られるーーー! そう思った結空は思わず胸元をぎゅっと握る。 しかし曽根崎はそれを軽々と避けて反対に持っていたカバンを相手の頭に叩きつけた。 よし……! いつの間にか結空の手は小さなガッツポーズを作っていた。 曽根崎の身のこなしはケンカに相当慣れているようだった。ひらりひらりと拳を、蹴りをかわして、相手の手薄になっている部分へ攻撃をしかける。 遠目から見ていても曽根崎が優勢なのは見てとれた。 この様子なら、放っておいてもきっと大丈夫だろう。 学校をさぼっている自分が見つかるわけにはいかないし、どこか違う場所へ移動しよう。 そう思って腰を上げた瞬間、視界に移る曽根崎が、足元を滑らせたのだろうか体勢を崩し、あっという間に制服を着た1人に羽交い絞めにされた。 もう1人がどこかから拾ってきたのか長い角材のような棒を持って曽根崎へと近づいていく。 あんなので殴られたら大怪我だ。 怪我だけならまだいい。打ち所が悪ければ死んでしまうことだってあり得る。 ぼこぼこに殴られて動かなくなった体を川へドボン……。 だめ……。そんなの、いやだ……!! 想定できる悪い未来を色々と思い浮かべ、結空はなぜか、気付いたら叫んで走り出していた。 「や、やめろ……!お前ら、やめろーーーーーっ!!」 結空に気付いた4人は動きを止めた。 結空に気を取られて曽根崎を押さえつけていた力が一瞬緩んだのだろう。 曽根崎はすかさず後方へヘッドバットを繰り出し羽交い絞めにしていた男の顔面を押し潰した。 「ぎゃ……!!」 変な悲鳴が聞こえたかと思うと、すぐさま曽根崎の蹴りが正面にいた角材持ちの股間にヒット。 その男が倒れこんだ隙に角材を奪い取り、その横でただ狼狽えるスウェットの男に向けられた。 結空と4人との間にはまだだいぶ距離がある。 自分が騒ぐことで、このケンカが収束へ向かえばいい。 結空は走りながら叫び続けた。 「警察っ!警察呼んだからな!!今すぐ来るぞ!パトカーが!!」 結空の言葉がたまたまその場の状況と絶妙なタイミングでリンクした。 4人の真上に当たる橋の上をウーウーとサイレン鳴らしたパトカーが走る。

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