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第37話

このままでは昼食もとれないし、薬が飲めなかったらまた、発情が暴走してしまうかもしれない。 それよりも財布や学生証も入っていたのだから警察に届けなくては。 何にしてもこのまま大人しく授業を受けている場合じゃなくなってしまった。 「はー……どうしよ……」 これはもう、一度家に帰って親に相談するしか……。 そこまで考えて、母親が薬を買うために財布から数万を取り出していた場面を思い出す。 薬をまた買わせるのか……。 結空はぶんぶんと頭を横に振った。 幸いにも持ち歩いていたのは今日の昼飲む筈だった一錠だけ。この一回分くらいどうにか飲まずにやり過ごせないだろうか。 いや、無理だ。 Ωに覚醒した日を思い返せば、そんなことはできない。 結空が苦しかったのはもちろんのことだが、αもβも、Ωの結空に惑わされて体を熱くしていたのだから、再び発情した結空が目の前を彷徨いていたら迷惑も甚だしいことだろう。 鞄をもう一度探しに行ってみるか? よくよく考えると学生の鞄なんて盗んだところで何のメリットもないだろう。 教科書に参考書、ノートに筆記具。学生証はこの学校の生徒であることを伝えてしまうけれどそれ以上のことは記載されていない。財布の中身だって、3000円位しか入ってなかったはずだ。そっちが目的ならば、金だけ抜いて入れ物は捨てられるだろう。 うん、そうだ。 探しに行こう。 結空はブレザーの内ポケットからスマホを取り出してクラスメイトの渡辺にメッセージを送った。 体調不良で早退すると担任に伝えておいてほしいという内容だった。 来たばかりなのに帰るだなんて、流石に図々しい気がして直接担任に言うのはちょっと憚られる。 渡辺は結空のフェロモンに充てられて「勃った」と発言し結空にショックを与えたけれど、結空が頼れるクラスメイトは他にはいない。 文の終わりに、「お願い」と可愛らしく付け足しておく。 きっと上手くやってくれるに違いない。 あとはあの広い河川敷をどうやって捜索するか。 一人で探し回るのは少々無謀な気もする。あっという間に日が暮れて、薬が切れたらと考えると恐ろしい。 透……。透に手伝ってもらおうかな。 でも……、学校サボらせることになるし悪いかな。曽根崎なんかはいつもサボってるだろうから問題ないと思うけど……。 そうだそもそもの原因は曽根崎のケンカだった。曽根崎に責任もって探してもらえばいい。 あ……。 連絡先知らないや……。 さてどうしたものか、と窓の外へ目を向けていたその時、背後から聞きなれた声がした。

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