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第40話

でも透は曽根崎のように無茶なことを強いたりしないし、結空の体を第一に考えてくれる。 一緒に居ると安心できる。 それって結構、重要なことじゃないか……。 別に透が運命の人だなんて思ってないけど……。 結空は最早何にドキドキしているのかわからない状態で、透の自転車の荷台に跨った。 面倒くさそうに自転車を漕ぎだした割に、曽根崎は結構なスピードで先頭を切って走っていく。 透も負けじとペダルを漕ぎ進めるが、結空を後ろに乗せているためか追いつくことは出来なかった。 前を行く曽根崎がどんどん遠くに離れ、曲がり角でとうとう姿が見えなくなった。 「透、俺重いだろ。悪いな。あいつちょっとくらい待ってくれてもいいのに……」 「全然。結空は軽い方だと思うよ、気にしないで。それに追いつけないのは曽根崎の身体能力がずば抜けて高いから。結空知ってた?曽根崎って部活に所属してないけど、度々色んな部から助っ人頼まれて、試合に出たりしてるんだって。日頃からコツコツと頑張っている人たちと同等にスポーツ出来るってすごいよね」 「……うん」 透がそんな風に曽根崎を見ていたなんて知らなかった。 「でも俺、曽根崎には負けたくない。結空を取られたくない。結空の事はずっと俺が守るって、子供の頃から決めていたから。俺は結空の番になりたいんだ」 「透……」 「今すぐにとは言わない。けど、俺のこと見ていてほしい。俺はずっと結空だけ見てるよ」 結空は透の後頭部を見詰める。後ろから見えた耳朶がほんのりと赤くなっている。 結空にも伝染したのか、耳が、頬が熱くなった。 背中がぞくんとして、じわっと尻が濡れた気がした。 思わず額を透の背中に押し付ける。 透の指、優しくて気持ちよかった。透の匂いも好きだ。穏やかで優しい匂い。 透の熱に貫かれたら一体どんな気持ちになるのだろう。 透と……エッチな事したい。 結空はそう思って、はっと我に返る。 え……あれ……。俺今何を考えた? 今はそんなことを考えている場合じゃない、と頭を振って自分を叱咤する。 自転車はサイクリングロードへと入り、結空はそこから河川敷へ目を向けた。 「この辺?」 「もっと先。ちょうど曽根崎がいる辺り……」 一足先に到着した曽根崎は、自分がケンカをしていた場所まで戻っていた。 足元の雑草を蹴飛ばしながら結空の鞄を探しているようだ。

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