40 / 145
第40話
でも透は曽根崎のように無茶なことを強いたりしないし、結空の体を第一に考えてくれる。
一緒に居ると安心できる。
それって結構、重要なことじゃないか……。
別に透が運命の人だなんて思ってないけど……。
結空は最早何にドキドキしているのかわからない状態で、透の自転車の荷台に跨った。
面倒くさそうに自転車を漕ぎだした割に、曽根崎は結構なスピードで先頭を切って走っていく。
透も負けじとペダルを漕ぎ進めるが、結空を後ろに乗せているためか追いつくことは出来なかった。
前を行く曽根崎がどんどん遠くに離れ、曲がり角でとうとう姿が見えなくなった。
「透、俺重いだろ。悪いな。あいつちょっとくらい待ってくれてもいいのに……」
「全然。結空は軽い方だと思うよ、気にしないで。それに追いつけないのは曽根崎の身体能力がずば抜けて高いから。結空知ってた?曽根崎って部活に所属してないけど、度々色んな部から助っ人頼まれて、試合に出たりしてるんだって。日頃からコツコツと頑張っている人たちと同等にスポーツ出来るってすごいよね」
「……うん」
透がそんな風に曽根崎を見ていたなんて知らなかった。
「でも俺、曽根崎には負けたくない。結空を取られたくない。結空の事はずっと俺が守るって、子供の頃から決めていたから。俺は結空の番になりたいんだ」
「透……」
「今すぐにとは言わない。けど、俺のこと見ていてほしい。俺はずっと結空だけ見てるよ」
結空は透の後頭部を見詰める。後ろから見えた耳朶がほんのりと赤くなっている。
結空にも伝染したのか、耳が、頬が熱くなった。
背中がぞくんとして、じわっと尻が濡れた気がした。
思わず額を透の背中に押し付ける。
透の指、優しくて気持ちよかった。透の匂いも好きだ。穏やかで優しい匂い。
透の熱に貫かれたら一体どんな気持ちになるのだろう。
透と……エッチな事したい。
結空はそう思って、はっと我に返る。
え……あれ……。俺今何を考えた?
今はそんなことを考えている場合じゃない、と頭を振って自分を叱咤する。
自転車はサイクリングロードへと入り、結空はそこから河川敷へ目を向けた。
「この辺?」
「もっと先。ちょうど曽根崎がいる辺り……」
一足先に到着した曽根崎は、自分がケンカをしていた場所まで戻っていた。
足元の雑草を蹴飛ばしながら結空の鞄を探しているようだ。
ともだちにシェアしよう!