48 / 145
第48話
「そうじゃねぇよ。俺とお前で行くんじゃねぇのかよ」
「え……?」
俺とお前で……?
その言葉が結空の頭をぐるぐると巡った。
「そんな……。二人で行ったらまるでデートじゃないか」
「違うのかよ」
「……」
結空はハッとした。
曽根崎は結空と二人で出掛けたかったということに今頃気付き、色々な気恥ずかしさに襲われてかぁっと顔を紅潮させた。
「違うんだ曽根崎」
「あ?」
声を掛けた渡辺が曽根崎にぎろりと睨まれ肩を竦める。
「ここにいるメンバーで行くんだけど、曽根崎も一緒がいいって。渡辺が」
田所が言うと、曽根崎はそこに集まったメンバーを見渡した。
金子、田所、渡辺、太田、そして結空。
曽根崎は金子と田所を見てあからさまに眉を顰め、一拍置いて溜息交じりに頷いた。
「わかった。俺も行く」
「そうだ、透も誘っていい?」
こんなにワイワイと友達とクリスマスを過ごすのは初めてのことだ。
結空は透がイルミネーションを見て優しく微笑む姿を想像する。
きっと喜んでくれるだろう。
透の喜ぶ顔が見たい。
「透って、あの月岡?そういえば矢萩は月岡と幼馴染なんだっけ?」
「うん」
「おい、なんで月岡も誘うんだよ」
曽根崎がじろりと結空を軽く睨む。
「なんでって……一緒に行きたいんだから別にいいだろ」
「チッ」
曽根崎は舌打ちをしたきり、机に突っ伏してしまった。
************************
期末テストを終え、冬休みまであと僅か。
Ωに転化してから慌ただしく日々が流れどうなることかと結空の周りの誰しもが思ったことだろう。
無事に過ごせたとは言い難いが何とかやれてこれた。それは結空の自信に繋がり、同時に緊張の糸が切れ、心に隙ができたということでもあった。
12月24日。クリスマスイブ。
外は凍るような空気の冷たさで指先がじんと痺れる程の寒さだ。
結空はショート丈のダッフルコートを羽織り家を出た。
待ち合わせ場所はショッピングモール、シュプール脇の並木道入口。
時刻は17時。待ち合わせの時間も17時。結空は時間にぴったり着くように向かった筈だったが、結空以外のメンバー全員が既に集まっていた。
「ごめん!待たせた?」
17時ぴったりに到着したのだから謝る必要はないのだが、全員が結空待ちだったとしたら申し訳ない気持になる。
ごめんと手を合わせて改めて顔を上げると、私服だからなのか、そこにはいつもと雰囲気の違うクラスメイト達がいた。
ともだちにシェアしよう!