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第49話

渡辺と太田は結空と同じようにカジュアルな私服でどこかほっとする出で立ちだったが、曽根崎に透、金子と田所は周囲にいる女性達の視線を総なめにしていた。 それぞれが雰囲気に合ったファッションに身を包んでいるのはわかるが、よく見れば全員が無難なオシャレ具合である。それなのに惹き付けられてしまうのはαたる所以からなのか。 根崎は黒いカーゴパンツにカーキのダウンジャケット。透はグレーのピーコートにストライプのマフラーを巻きジーンズを穿いていた。金子と田所も似たり寄ったりな服装であったが、4人とも、まるでファッション雑誌からそのまま飛び出てきたモデルのようだった。 α、β、Ω。全員が揃ったこの場所で、αの4人だけ人並み以上に容姿さえも抜きん出ている。 見た目だけでこんなに違うなんて、神様なんてこの世にいないんじゃないかと思ってしまうほど、不公平だ。 多少の嫉妬を覚えながらも、結空の視線はαの4人の間を泳いだ。 「結空、今日も可愛いね」 透が微笑みながら言った。その言葉に心拍数が上がり、結空は消え入りそうな声で応える。 「か、可愛くないし……」 「おら、ちゃっちゃと行くぞ」 「わ」 透の前でもじもじしている結空の腕を曽根崎がぐいっと引っ張る。 結空を連れ立って先頭を切った曽根崎の前に田所が立ちはだかった。 「おい曽根崎」 「あ?」 「お前一人で矢萩をエスコートすんなよ」 「は?エスコート?してねーよそんなの。つーか、お前ら何?こいつ口説きにきたのか?」 「そうだけど」 「無駄だ。こいつは俺のだ。手ぇ出すならぶっ潰すぞ」 辺り一面光り輝くイルミネーションを目の前に、曽根崎と田所は既に険悪な雰囲気で一触即発な状態にあった。 「ちょ、ちょっと……曽根崎も田所も落ち着いて……」 まだ待ち合わせ場所に辿り着いただけで、この並木道を楽しんでいないのに……。 せっかく渡辺と太田が一緒に楽しもうってセッティングしてくれたのに。 どうしていいのか結空は視線を渡辺に投げ掛けた。 こういう時は大抵渡辺がうまい具合に解決してくれるのだ。 渡辺は結空の困り果てた視線に気付いて苦笑いしながら曽根崎と田所の間に入ってくれた。 「やめろって二人とも。矢萩が困ってる。そんなにエスコートしたいんなら、矢萩に選んでもらえばいいんじゃないの?矢萩、ここにいる中で、誰とだったら手を繋いでもいいと思う?」 「え……?」 唐突なフリに結空は面食らった。 渡辺の言葉の通りでいくと、結空は誰かと手を繋がなければいけないということになってしまう。

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