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第51話
その中を渡辺と一緒に手を繋ぎながら行く。
最初は男同士で手を繋ぐなんて、自分がΩだと周囲に知らしめるようで不安だったが、誰もこちらを見ている気配は感じない。どうやら自意識過剰だったらしい。それもそのはず、このイルミネーションを見に、人々はここへ集まっているのだから。
ケヤキ並木に沿って結婚式場へと足を踏み入れる。
「うわ、すごい」
「すごいな!」
結空達は目を見張った。
そこは植込み一面にも電飾が施してあり、動物や天使のオブジェも、キラキラと静かに青白く光り輝いていた。
ファンタジックな異空間は現実離れした夢のようで、結空は純粋にそれを美しいと思ったし、どこか心が真っ新にリセットされるような、そんな感じさえした。
「結空」
「透……」
透に声をかけられて振り向いた。
圧巻の輝きの中で微笑む透を見て、結空の心臓がどくん、と大きく音を立てる。
「楽しい?」
「うん。すごくきれいだな」
「良かった。俺的には、結空が楽しいのが一番。このイルミネーションはすごいけどね」
目がチカチカすると笑いながら透が言う。
空気は冷たいというのに、頬が熱くなった。
「おい、渡辺と手ぇ繋ぎながら月岡見て赤くなるっておかしくねぇ?」
後ろで曽根崎がぶすっとしながらこっちを見ていた。
「あっ、赤くなんかなってないし!」
「そんな顔して言われても説得力ねぇな」
「そんな顔?……渡辺っ、俺の顔、どこかおかしい?」
曽根崎の言葉がイマイチ理解出来なくて、もしかして顔に何か汚れでもついているのだろうかと、結空が赤く火照った頬を手のひらで擦る。
「いやぁ……、おかしいというか、可愛いよ正直」
「……っ」
太田もうんうんと頷いていた。
こんなところで可愛いだなんて、女に使うような言葉で褒め殺しはやめてほしい。
何がどうしてこうなってしまったのかわからないが、可愛いと言われて、結空の心はどこか喜んでしまうのだ。
「そっ、そうだ!金子と田所は!?」
話を逸らそうと咄嗟に金子達の姿を探す。
しかし結空たちの近くにその姿は見当たらない。
「途中で女の子達に捕まっちゃって。先に行ってるねって声かけといたから」
「ほんとあの二人、女子にモテるよね」と太田が肩を竦めながら言う。
「月岡と曽根崎は声かけられなかったの?なんであいつらだけ?」
渡辺が不思議そうな顔をした。
確かに透も曽根崎もこの人混みの中、全く声もかけられず、ここまで辿り着いたとは考えにくい。
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