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第52話

「それは太田とこうやってきたから」 透と曽根崎が両サイドから太田の手を持ち上げる。 太田は二人に手を掴まれて、まるで囚われの宇宙人のようだった。 「え。お前ら3人で手繋いできたってこと?」 結空も渡辺も目を丸くして顔を見合わせ、同時に吹き出した。 「ぷっ、はははっ」 「見かけによらず面白いなあ、曽根崎も月岡も」 「面白くなんかねーよ。なんでこんなんと手なんか繋がなきゃなんねんだよ」 「まぁいいじゃない。おかげで変に足止めされることもなかったんだし。太田のおかげだよ」 「……なんか複雑な気分」 太田の困った顔がおかしくて、結空はまた笑い出した。 ーーー楽しい。 すごく楽しい……! 友達とバカなことして笑いあえるのが嬉しくて、結空の心が弾むように踊る。 自分の体が変わってからはずっと後ろ向きな事ばかりを考え悲観的になっていたけれど。 こうしてまた以前と変わりなく、友達と一緒に笑って過ごせるなんて。 結空はずっと笑顔だった。その笑顔に男を魅了する効果があることを知ることもなく、結空は可憐な表情を見せ続けた。 「大体見尽くしたな」 「うん。すごかったね。今度は彼女と来たい!」 そう言って太田がガッツポーズを作ってみせる。 一頻りイルミネーションエリアを歩き回って、金子と田所を欠いた結空達5人は一旦立ち止まった。 「飯どうする?なんか食べてく?」 「いいね。賛成。矢萩は?」 渡辺の提案に太田はすぐ頷いた。 結空も「いいよ」と頷いた。すると透と曽根崎もそれならばと同意した。 「矢萩なんか食いたいもんとかある?」 「え俺?俺はそうだな、なんかちょっと……甘いものが食べたいかも」 「は?この飯時に甘いもんかよ。勘弁してくれ。肉食い行こうぜ肉」 曽根崎は結空の言葉を瞬時に却下し、ショッピングモールの中にある焼肉店を指し示す。 「そうだなぁ、矢萩に聞いといてアレだけど……夕飯に甘いものはないかも」 「焼き肉屋にもデザートはあるからいいんじゃない?ね、矢萩?」 「あぁ、うん。ごめん。俺変なこと言ったみたいだな。うん、焼肉でいいよ」 「よしよし、そうと決まればレッツゴー」 渡辺と太田は空腹に耐え切れない様子で歩き始めた。 とっくに手を離された結空も、透と曽根崎の間に挟まれ歩き出す。 なんだろ……。生クリームみたいなこってりした甘いものが食べたいな……。 それにちょっと熱くなってきた。 結空はハァッと白い息を吐き、空気の冷たさを確認する。 「結空?」

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