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第54話

女に囲まれてデレデレしやがって。 俺と何度もセックスしたくせに……! 手に取るようにわかる嫉妬心。 結空は不機嫌そうにダッフルコートを脱いで脇に挟み抱えた。 暑いのにダッフルコートの上からダウンとか、あり得ないし! 曽根崎のバカ野郎……!! 歩きながらも結空の吐息は甘味を含んだ香りに変化し、うなじからΩ特有のフェロモンが湧きたつ。 カッカしながら歩いていたからなのか、鼓動が早く、強く変化しても、この真冬に身体が熱くてコートを脱いだことも、結空は発情期が原因なのだと思えなかった。 友達とわいわい騒いで、楽しくて。 自分がβだった頃を思い出し、そのころに戻ったように錯覚して、戻れないとわかっているのに戻りたいと願い、そうありたい姿を再現したかったのかもしれない。 熱い……。すごく甘いものが食べたい。喉も乾いた。水が飲みたい。 道の端には露店が並ぶ。このイルミネーションの輝きを損ねることのない、おしゃれで可愛らしいワゴンでクレープや飴細工、パステルカラーの綿菓子やアクセサリーなどの雑貨も販売されている。 結空の足は甘い匂いに釣られて、クレープのワゴンへと引き寄せられた。 「い、いらっしゃいませ」 女性販売員が結空を見て眉を顰めた。 「チョコ生クリーム一つ」 お金と引き換えにクレープを無言で手渡される。 お礼の一つもないなんて、態度の悪い販売員だと思ったが、苦情を出す余裕などなく、すぐにかじりついた。 ふわっと生クリームのまろやかな甘みと、クレープ生地から香る卵の香り。 美味しい……。 かぷりかぷりと、至福の甘さを噛み締めていると、突然ずんっと下肢が重くなった。 「……っ」 い、嫌だ!こんなところで……! 嫌だ、だめだと、自分を諫めようとしても結空の性器はぱんぱんに張り詰め、前も後ろもぐずぐずにとろけて愛液を溢し、あっという間にデニムにいやらしいシミを作った。 「……っく」 発情期がやってきたのだ。 甘いものを欲したのは発情を促すための栄養補給するためだったのか。 Ωになりたての身体は不安定で、発情周期も安定しないことも多い……。 そう言った医者の言葉を思い出す。 結空にこの発情期をそらす術はない。 薬は置いてきたのだから。 本当は頼りたくないのだけれど、透と曽根崎のところに戻ろう、戻らなくちゃいけないと思った。 緊張と不安に襲われ、前も後ろも淫らな体液が溢れ出し、膝が笑う。 しっかりしろ!結空! 結空はかくかくと震える膝をばしんと叩き自分に気合いを入れた。

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