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第55話

「大丈夫?」 誰だ? 気を抜いたらぐらつきそうになる自分の身体を、足の踏ん張りでなんとか保ち、声の方向へ顔を向けた。 知らない男だった。 相当体調が悪そうに見えるのか、結空を心配する声は方々からから聞こえてくる。 伸ばされる手は無数にも見え、いつの間にか周辺の見知らぬ男たちに取り囲まれた結空は、逃げ場を無くしてその場に崩れるようにして座り込んだ。 はっ、はっ……と息が荒くなり、全力疾走したかのように心臓もどくんどくんと脈打っている。 尻からとろとろと体液が止めどなく溢れ出て、結空の身体は男を受け入れる準備を始めていた。 こいつΩだ…… Ωは犯しても犯罪にならないって聞いたことあるぜ…… どうする?順番にマワすか? ざわざわと自分を犯す算段を話し合う声が聞こえ、その声が耳の奥でハウリングを起こし、キンーーと酷い耳鳴りを誘発した。 いやだ……。 いやだ……!!! 助けてーーーー。 ぎゅっと耳に手を当てて身体をぎゅっと小さく縮める。 「大丈夫ですか?こんなところじゃアレなんで、そっちの路地裏行きませんか?」 怯えながら目を遣ると、結空の手首をぐっと掴みはぁはぁと息を荒くしたスーツ姿の中年男がうっすらと気味の悪い笑みを浮かべて立っていた。 「やっ、嫌です!行きません!」 絶対に嫌だ。死んでもこんな訳のわからない連中に身体をどうこうされたくない。 俺が求めているのは、αの身体だ……! 見知らぬβ達に取り囲まれていいようにされそうな自分にも腹が立つ。 「大丈夫。怖くないよ。気持ちいことしよう」 「……気持ち悪い」 「え?」 「気持ち悪いって言ったんだ!ふざけんな!」 結空は突如として立ち上がり、手首を掴む男の股間を思い切り蹴り上げた。 男は声にならない悲鳴を上げてその場にうずくまる。 しかしその行為は、Ωを蹂躙したい男達の加虐心を煽ることとなった。 「おい!Ωのくせに調子乗ってんじゃねぇぞ!ここで裸に剥いてやる」 そうだそうだ! と誰かが言った言葉にΩのフェロモンに惑わされた男達が賛同し、伸びてくる手に結空の衣服が引っ張られる。 もみくちゃにされながら、結空の衣服がところどころちぎれ、外気に皮膚が晒された。 「やだ!やめろ!やめろっ!!」 どんなに叫んでも多勢に無勢で、手も足も押さつけられ、ベルトにまで手がかかる。 引き抜かれたら終わりだと腰を捻って抗うが、腰を振って可愛いと、それすらも男達の興奮材料となった。

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