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第58話

黙ってこくりと頷くしかなかった。 だが、道中耐えられるだろうか。この欲情を始めた身体はもっともっと熱くなっていくだろう。 透…… 欲しいと強請ったらくれるだろうか? 欲しいと強請りたい。 ダメだ。透はこんな状態で俺に手を出す人間じゃない。 でも、なんで? 俺は欲しいのに、どうして透はしてくれない? 欲しがっちゃいけないの? でも、でも……だって欲しいんだから仕方ないじゃないか……。 それにしたってなんでこんなに欲しくなるんだ? 透だから?いい匂いがするから?透のきっと逞しいあれが欲しいよ……。 あぁ……でも曽根崎の身体も……。 くそっ、なんでここで曽根崎のことを思い浮かべてしまうんだ。 後先に考えが及ばなくなるほど、思考力が低下していく。 セックスしたい。 Ωってこういう生き物なんだ……。 「透、……自転車?」 「うん。後ろ乗れそう?無理ならタクシー拾って家まで送る。タクシーの運転手も信用できないからもちろん俺もその時は一緒に乗るよ」 「ううん……、いい。あのさ、お願いがあるんだけど……」 「何?」 「透とセックスしたい」 「……どうして?」 「もう、我慢できない。このままじゃここでオナニーしちゃいそう。公然猥褻とかで捕まるかな」 「そんなに我慢できない?」 「うん……無理……。お尻がもうどろどろで……」 なんでこんなことを言わなきゃいけないのか。恥辱的な言葉。言わざるを得ないこの状況。 結空の目に涙が滲む 「わかった。どこかホテル行く?」 ホテル?ホテルってラブホテルだろうか?恋人達が営みをするところ? 透は俺を抱いてくれるかもしれない……。 結空は前途に一筋の光を見出したように感じ、力強く頷いてみせた。 「家の人に薬持ってきてもらおう。それまでホテルで待機することににしよう。それが一番安全かも」 「え……」 母親か妹か。どちらかに電話すれば薬は持ってきてくれるだろう。 しかし薬を服用した後では透と繋がることはできなくなってしまう。 嫌だ……! 「結空?薬持ってきてもらって薬飲んだら家の人と一緒に帰ればいいよ。ね?怖いのなら、俺も一緒に付き添うよ?」 「……だ」 「え?」 「嫌だ……!俺は透とセックスしたいの!なんで?なんでしてくれないの?俺は透がいいんだ。透は俺のこと運命の番だって言ってくれたのに、全然触れてもくれない……!なんで俺を抱かないの?」

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