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第70話
その翌日が土曜日で、土、日と休みが続いたのは幸いだった。身体をゆっくり休めることができた。
まさかセックスのし過ぎで足腰が立たないだなんて、家族はもちろん学校の友達にも誰にも、知られたくない。
だから帰宅してすぐ発情抑制剤を服用し、情交の痕を隠すようにして、不自然にならないよう風邪を引いたと自室のベッドへ潜り込んだ。
あまりに激しく透と励んだからか、実際体調は優れず食欲もあまり湧かなかった。
発情期間だからかもしれない。それに加え、強い発情を薬で抑えるということは、何か副作用があったとしてもおかしくない。
それらが重なり体調不良を引き起こしているとも考えられた。
そうして土曜をベッドで一日過ごし、日曜の昼に妹のあいりが部屋へおかゆを運んできてくれた。
「兄貴ー、入るよ」
「ん……うん……」
「うわー、なんか辛気臭っ!暗っ!カーテンくらい開けなよ!っていうか、……やっぱΩの匂いするんだね。薬飲んでもわかるわ」
そう言いながらあいりがおかゆの乗ったトレーを勉強机の上に置いた。
結空はベッドの上からそれを眺め、まだちゃんと体に合った薬を処方してもらえていないのかな?と頭の片隅で考える。
「そんなにわかる?」
「うん。まぁ、微かだけど。家族だから余計にわかるんだと思うよ。明らかにこの家じゃ異質の匂いだもん。これ」
「ごめん……。臭い?」
「んー。臭いっちゃ臭いけど。なんていうか、女の敵って感じの匂いかなー」
女の敵……。
Ωに転化してからというもの、クラスの女子に悪く言われているのは知っていた。
その上妹にまで。
ちょっとショックだ……。
そうは思っても、今更女子とどうこうなりたいとは一切思わないのだから女の敵というのは的を射た言葉なのだろう。
結空の本能はαの男を常に探し求めている。
あいりが少し遠慮がちに「あのさぁ」と口を開いた。
「兄貴さぁ、透くんともしかして付き合ってる?」
「え……付き合ってないよ」
「そう?金曜の夜、透君に兄貴が送られてきたって母さんが言ってたから。透君相変わらずイケメンよね。結空のことお嫁さんに貰ってくれないかしらって言うから、兄貴より女の私は!?って本気で腹立っちゃった」
「え、マジで……」
そんなことがあったのか!?と、自分の知らないところで親が透をそんな目で見ていたことに衝撃を受けた。
「あいり、透のこと好きなの?」
「いや別に。そりゃ透君めちゃくちゃカッコイイけど別次元の王子様って感じだし……。でも兄貴が透君とってなったらムカつくかも!」
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