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第71話
そうか……、と妙に納得してしまった。
確かに世間一般的にいい男であるαの透が、男のΩとくっついてしまったら。
結空の中にもΩに対する偏見があり、自分の性欲がコントロールできないことも踏まえると、傍から見ていい気はしないだろう。
「でもまぁ透君と兄貴が仮に結婚したとして……、透君はあたしの義理の兄さんになるわけでしょ。それはそれで悪くない……かも。それに急にΩに転化した兄貴がちょっと気の毒でもあるし。だから出来れば幸せになってもらいたいと思わなくもない」
「あいり……」
結空の口元が少し緩んだ。妹に嫌われているわけではなさそうだし、素直じゃない言い方もあいりらしくて生意気だけど、兄を心配してくれる気持は伝わってきた。
嬉しかった。
「兄貴の身体、発情期に早く慣れるといいね」
あいりはそれだけ言い残して部屋を出て行った。
兄を想う気持が嬉しかった。やっぱり家族は自分を裏切らないと安心できる。
だからこそ家族にΩの負担を強いるわけにはいかない。
早く自立しなくちゃ。
あいりの顔を見て、改めてそう思う。
結空はベッドから勉強机へ移動すると、運んでもらった粥に手を伸ばした。
あいりには、透とは付き合ってないと言ってしまった。
付き合ってないのに、セックスするのはやっぱりおかしいよなと思う。
でも、したくてしたくて、たまらなかった。前後不覚に陥りそうなくらい、我慢できなかった。
とにかく尻を透に貫かれたくて、懇願してしまうほど、やりたかったのだ。
してる最中は死ぬほど気持よくて、間違いなく幸せだった。
中に何度も出された時だって、出された精子を全部尻で飲み込んで、腹の奥で喜びの悲鳴が上がったのは確かだった。
透は優しい。頼りになるし、本当に魅力的ないい男だ。
Ωに転化してからというもの、それを目の当たりにすればどきどきと胸が高まるし、胸の奥がきゅっと甘く絞られる。
しかし、それだけじゃなかった。
最終的には息が荒くなって、下肢に熱が溜まりだし、尻が濡れる。
「んー……」
これは果たして好きと言っていいものなのだろうか。恋で間違いないのだろうか。
恋ってこういうものだったっけ?
首を捻りながら難しい顔で粥を口にしていると家の階段を誰かが上がってくる足音がした。
あいりでも、母親でもない、ずっしりとした男の足音だった。
父親は仕事でいるはずもなく、もしかして透が様子を見に来たのだろうかと身構えた。
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