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第74話

「っ、やだっ、やめろってば……!!」 わけもわからず、ただただ曽根崎の存在に反応してしまう身体が怖かった。 Ωになってからというもの、発情期が訪れると、薬を服用するしないに拘わらず、αである曽根崎に身体が過剰反応してしまう。 結空の力ない抵抗など意味を成さないほど、曽根崎との力の差は圧倒的で、身体を突っぱねて拒絶したいのに力の差だけでなく、曽根崎のフェロモンが結空の思考をも奪い、身体の芯をぐらつかせる。 「そうやって抵抗されると余計燃えんだけど」 そう言いながら曽根崎の手は乳首から結空の尻へと異動して、パジャマの上から後孔へ指を優しく突きたてる。 くちゅ、と湿った音がした。 「あ、ぁっ、んっ」 「こっちもぐちゃぐちゃなんじゃねぇ?やらしい音立てて準備万全だってよ」 「や、やだ、も……、俺、風邪ひいてるって……」 こんな家族がいる自宅でできるわけがない。 貪欲で汚い自分のΩ性を家族に見せたくはないし、なんにつけてもすぐセックスへ持ち込もうとする曽根崎も嫌だった。 本当は風邪なんて引いてないけど、体調を気遣ってくれるのならばこんなことしない。 こいつは全然、自分のことなど考えていない。 そう思うと悲しくなり、結空の目に涙が滲む。 「ぅー……っ、ほんと……曽根崎、お前なんなの……?きらいっ……」 結空は涙が盛り上がった赤く潤んだ目で曽根崎を睨みつける。 強引でいい。本当は奪われたい! 強く、強く抱きしめられたい! だけど、それだけじゃ物足りない……! もっと深いところで繋がりたい……! 結空は心の奥底で、曽根崎の心を求めている。 結空はそれに気付けず、睨みつける視線にありったけの想いを無意識に込めた。 「お……まえ……」 「嫌いっ、嫌いっ、…大嫌いだっ!…ぁっ」 「うるせぇ。少し黙ってろ」 不意にぎゅっと抱き締められて、呼吸を忘れた。 周りの音が遮断され、この世にいるのは、結空と曽根崎二人きり。 そんな錯覚すら起こしそうになった。 曽根崎が優しい手つきで結空を抱き締めていることが、異様であった。 何で抱き締めるんだ!嫌だ……! もっと、もっと抱き締めて、離さないで。 矛盾した想いが頭の中で錯綜し、けれど身体は正直に曽根崎のフェロモンに従おうとする。 「ん……、んん……」 こんな曽根崎はおかしいと感じているのに結空は甘えた声で曽根崎の胸に頭を擦りつける。 まるで子犬のようにクーンと鳴いて、首輪を付けられ抱かれて安心を得るみたいに。

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