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第81話

いつもより精悍で真っ直ぐな強い眼差しに射貫かれ、結空の心臓がどくんと音を立てた。 透がここまで想ってくれている。自分に向けられている透の愛は想像以上に大きくて、自分の中で混沌としたΩの策略によって振り回されている感情なんかとは全然違う。 今の中途半端な自分なんて透には不似合いだ。 「透……、俺も透に話したいことがある」 「何?ーーーあ」 結空がどう説明していいのかわからない感情を透に伝えようとした時、始業開始5分前のチャイムがなった。 「チャイム鳴っちゃったね。大事な話しみたいだから、終業式終わったら話そうか?」 「うん……」 透は結空に優しく微笑む。いつも通りの柔らかな表情に、少し安心した。 ずっと結空は考えていた。 自分がΩに変わってから心身ともに急激な変化が訪れたこと。雄から雌へ変わってしまったような、そんな感覚だ。 目の前に男がいれば、無意識にその男を値踏みした目で観察し、α体でないのかどうか判別しようとする。 曽根崎に強く惹かれるのは、もしかしたら薬との相性が悪いのかもしれないし、Ωがより強い個体を求めてそうなってしまうのかもしれない。ーーー運命の番。それがもし、仮に、曽根崎だったとしたら……。運命なんてあるはずないと自分に言い聞かせるだろう。 しかしそれだけでは片付けられない感情を持ち合わせているのも確かだった。 それもΩの成せる業なのか。 そして透への気持ち。 これもまたあやふやで、透のようにしっかりと芯を持った好きという感情は、結空の中にはまだ存在しない。 でもそれに似たようなものが結空の中で育ちつつあることは自覚済みだった。 透だけじゃなく曽根崎も。型は違えど結空に向ける気持ちにブレはなく、ここ数か月その想いをぶつけてられてきた。 αの本能で動いているだけなのかもしれないけれど、ひた向きで純粋。 そんな二人を今までのらりくらりとかわし続け、軽くあしらう様な真似をして、そんな自分が卑怯に思えた。 今の想いをちゃんと伝えなくちゃいけない。 結空は放課後の空き教室に、曽根崎と透の二人を呼び出した。 放課後結空がその場所へ行くと、曽根崎も透も既にそこに居て驚いた。透ならまだしも、曽根崎が時間より早く自分を待っているなんて思ってもみなかった。 「あ、お待たせ……」 「呼び出しといておせーよ。つーか、なんで月岡もいんだよ。まさかお前ら……俺たち付き合いますとかいう報告じゃねぇだろうな」 「違うよ」 すぐさま透が呆れた顔で否定した。

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