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第87話

眼鏡をかけた中年の担任教師が壇上に上がり、注目の的となっている美少年はその下で教室をきょろきょろと見回していた。 誰かを探しているようにも見える。 「同じ学年で過ごすのも3年目だ。大体みんな顔見知りだろう?なので、みんなの自己紹介は後回しにして、先に転校生を紹介します。赤峰ルイ君だ」 赤峰ルイ。 担任にそう呼ばれた美少年は自己紹介を始めた。 「初めまして、赤峰ルイです。親の仕事の都合で転校してきました。好きなことは映画鑑賞で、得意なことは特にありません。苦手なことは運動です。よろしくお願いします」 細身で身長は結空と同じくらいだろうか。陶器のように滑らかで血管が透けてしまいそうな白い肌。肌色に似合うミルクティのようなクリームがかったブラウンの髪は、少し長めで顔周りと襟足までを隠すくらいのミディアムショート。毛先が少し跳ねている。顔のパーツ一つ一つが歪みなく綺麗に左右対称で、ぱっちりとした二重に、すっとした鼻、少し薄めの唇、どれを見ても整っていてまるで人形みたいだと思った。 映画が好きで運動が苦手だと言っていた。文系の美少年という印象だった。 「じゃあ、赤峰は矢萩の隣に」 「はい」 パラパラとまばらに鳴る拍手の中ルイはにっこり華のある笑顔を浮かべながら軽く頭を下げ、担任の指示でなぜか結空の隣に座ることになった。 「矢萩君っていうの?宜しくね」 「あ、あぁ、うん。こちらこそよろしく」 ルイは教室中の視線に臆することもなく、席に着いてからも堂々としたものだった。 不躾な視線には慣れっこなのかもと、結空はルイの見た目から想像した。 初日は始業式だけだったのですぐに下校時刻となったが、ルイは女子生徒に囲まれ質問攻めにされている。芸能人が囲み取材を受けているかのようだ。 しかしルイが女子生徒にちやほやとされていたのはほんの2日のことで、その後、ルイに関する嫌な噂が瞬く間に教室中に広まった。 4月の半ば、新しいクラスにも慣れてきたころ、結空は恭也と学食で昼食をとっていた。 「なぁ結空、あいつの噂聞いた?」 恭也がオムライスを頬張りながら、もごもごと声のトーンを落として言う。 「噂?」 「赤峰ルイだよ」 「……知らない。何かあるの?」 「あいつ、Ωらしいよ」 Ω……? エビピラフを掬う結空のスプーンも止まる。 「嘘。ほんとに?」 あんなに綺麗な外見でΩと言われてもピンとこない。 「うん。女子達が噂してたの聞いたんだ」 「どんな噂?」

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