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第96話
ちょっと個性的だけどこれくらいはっきりした性格の方が付き合いやすいだろう。
それに一生懸命な自分を隠すことのないルイが少し可愛らしく思えた。
くすくすと笑っていると、ふわっと覚えのある花のような香りが鼻腔に流れ込み、はっとした。
───曽根崎が近くにいる。
ルイもまた強いαのフェロモンに気付いたのだろう。弾かれたように顔を上げた。
直後、結空の肩にずしっと重石が伸し掛かったかのように、がっしりとした腕が置かれそのまま後ろから緩く抱き締められた。
とくとくと忙しなく心臓が音を刻む。
首筋にちゅっと口付けられて、ぴくりと肩が跳ねた。
触れられた皮膚が喜んでいると自覚する。
「寂しくなって俺に会いにきたのか?」
透以上に曽根崎とは会っていない。
久し振りに聞いた曽根崎の声。元気そうだ。
「違うし。……離れろよ」
「ん?」
曽根崎のフェロモンが結空の体を刺激する。
冬休みのバイト代で買った強い発情抑制剤はとっくになくなり、またワンランク下の薬に戻した為か、それとも久し振りに接触したからなのか、腹の奥がきゅうっと絞られるように甘く疼いた。
「耳元で喋るなって」
「ヤりてぇ」
耳元でそう囁かれ腰にぞくんと欲情を示す熱が生まれる。
「や……」
こんなところで結空を煽ってどうするつもりなのか、曽根崎は結空の反応を見てにやにやと笑っている。
結空は苛立たしげに顔を顰めて曽根崎に抗議しようとした。
その時不意に視界に入ったルイの顔。頬をピンクに上気させ、足元は僅かに震えているようにも見える。
───まずい。
そう思った。
Ω特有のフェロモンがうっすらと香り立っている。
ルイのΩが花開き、曽根崎を誘おうとしているのがわかった。
「お前だれ?」
元々ルイの存在に気付いていなかったのか、それとも気付いてはいたが興味がなかったのか。曽根崎は匂いに気付き、そこで初めてルイへ視線を投げ掛けた。
「僕、赤峰ルイ……転校してきたんだ。よろしくね」
「へぇ。美人だな。Ωだろ?ここにいるとマワされるぞ。早く自分の教室戻れ」
(……ん?何か俺と対応が違くないか?ルイが美人だから?)
珍しく曽根崎がまともなことを言っている。ごくまともな当たり前の心遣いをルイにはするのに、どうして自分にはしてくれないのだろう。
そう思ったら急にむかむかと腹立たしくなり、結空は曽根崎の足を踵でぎゅむっと踏みつける。
「いっ!……ってーな矢萩!てめー犯すぞ」
「うるさいな。重いんだよ!」
結空と曽根崎がああでもないこうでもないといがみ合っていてもルイの視線は曽根崎を捉えて離さなかった。
少しして透が金子と田所を引き連れて結空とルイの所へ戻ってきた。
「結空に赤峰、お待たせ。金子と田所に話したらぜひ紹介して欲しいってさ」
透に続いて田所と金子も姿を現した。
「初めましてー田所でぇっす!」
「田所、その軽い挨拶はやめろ。品がない。で、赤峰というのは……」
「マジか。めっちゃ美人」
田所と金子がルイを見て、その美貌に目を奪われたその時、ルイが口を開いた。
「僕の運命の人……見つけた!」
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