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第102話
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「やだ、また雨降ってるの?」
「そろそろ梅雨入りかもね」
「最近学校早く行くのね?」
「うん。雨だとバス遅れたりするからさ」
「それもそうね。気を付けてね。結空、ちょっと顔色悪くない?」
「ん?大丈夫だよ。行ってきます」
5月も半ばを迎え、ここ数日は雨の日が続いている。
傘を持って玄関を出た。辺りを見回したが透はいない。ほっとした。
しかし母親に指摘されたように少し気分は優れなかった。だが、熱があるわけでもない。
少しでもいい企業に就職するには出席日数と成績が肝になる。
学校は容易に休めない。
結空はあれ以来、透と曽根崎には極力会わないよう心がけるようになった。
少し距離を置いてみようと考えたのだ。
Ωの自分は発情抑制剤を飲まないと普通の生活も送れないし、あの二人に会うとおかしな気分になってしまう。こんな大事な時期にそんなことで二人を振り回したくはない。
きっとこのまま会わなければ二人も自分も平穏無事な高校生活を送れる筈だ。
そのまま違う道へ進めば今まで以上に会う機会も減るだろう。
そのままそれぞれの幸せを探せばいい。
少なくとも結空は誰かと番になり幸せになるという将来のビジョンが全く想像できなかった。
かといって女性と結婚することも出来ないだろう。
自分は男に孕まされたい淫乱なΩで、男に抱かれたいのだから。
バス停へ着くとすぐにバスも到着し、傘を畳んで込み合う車内へ乗り込んだ。
手近にあった手すり棒に摑まり胸で鞄を抱える。
10分程で学校の最寄りに到着するのだが、途中から息苦しさに襲われ目の前が真っ暗になった。
貧血の症状だった。
目の前にいた乗客がしゃがみ込んだ結空に席を譲ってくれて、幸いにも座って休むことができた。
学校へ着いても気分は優れず、机に突っ伏す時間が続いた。
隣の席のルイはいつの間にか同じクラスの男子生徒を取り巻きにし、楽しそうに過ごしていた。
特進クラスへルイを連れて行った時のことをまだ根に持っているようで、結空には少し当たりが厳しい。
「辛気臭いΩが隣にいるのってやだなぁ」
ルイが結空に向かって言う。歯に衣着せぬ物言いは相変わらずで、いっそ清々しいとさえ思える。
「ちょっと体調悪いんだ」
「ふうん。薬飲みすぎなんじゃないの?」
「薬って抑制剤のこと?」
「そうだよ。飲まなきゃやってられないけど、強い発情を抑え込んでいるわけだから体にいいわけないよね」
「ルイはこういうの経験ある?」
「あるよ。貧血、めまい、吐き気、頭痛。病院行ったら薬飲むのやめろって言われたよ」
「え……。それでどうしたの?」
「具合悪いの耐えられなくて薬を一旦中断した。そしたら今度はヒートがきつくてさ」
「そうなんだ……」
「でも結空はいいじゃない。薬やめたって発散してくれる相手がいるんでしょ?僕なんて適当にそういう相手探さないといけないからホント最悪だよ。薬飲み続けて気持ち悪いの我慢するか、ヒートに苦しむか、適当に相手探して発散するか。どれが一番楽かって、相手を見つけてセックスするのが一番楽だよね」
ルイは「ね?」と隣に立っている金髪のクラスメイトに首を可愛らしく傾げてみせた。
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