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第103話

「お前最高だしな」 と金髪がルイの頭を撫でる。 それを見てルイは月一度の発情期を適当に相手を見つけてセックスしていることもあるのだと知った。 そうやってやり過ごすという方法もあるのだとルイは結空に伝えているのだ。 「Sクラスの曽根崎や月岡は相手してくれないの?」 「いや……だから透は幼馴染だし曽根崎だって元クラスメイトってだけで……。っていうか俺はそういうやり方はしたくない」 「はーっ。結空のそういうとこ、ほんとムカツク。どこからどう見ても月岡は結空にラブだったし曽根崎だって……。まぁいいや、辛いのは僕じゃないしね。ただ病院には行った方がいいよ。弱い薬に変えてもらうとか、場合によっては薬をやめろって言われるかもしれないよ」 「うん、ありがとうルイ」 「別に」 ルイが席を立つ。結空はルイの薄い背中を眺める。 自分よりも背は高いけれど、細く華奢なルイは頼もしく見えた。 事実、結空よりもΩ歴の長いルイは精神的にも強い。 少しひねくれた強気な性格や、口の悪さも、ルイを取り巻く環境やΩという第二の性そのものに感化されて作り上げられたものなのだろう。 自分と同じ苦労を知っているルイを嫌いにはなれなかった。 体調は一日優れずその日の学校帰り結空は病院へ寄り、貧血、頭痛など医師に症状を訴えた。 「時期がちょうど発情期ですし薬を服用してからの症状でしたら、恐らく一般的な副作用でしょうね」 「副作用……」 「健康体Ωの強い発情を抑えるために使われている薬は弱いものでも副作用のリスクは実は結構大きいんですよ。一旦薬をお休みして少し様子を見るのがいいでしょうね」 「でも学校はなるべく休みたくないんです」 「Ωは特別休が取れませんでしたか?」 「取れるけど……勉強が遅れるし……」 一週間も休んでしまったら相当授業は進んでいる筈だ。 周りに取り残されるのはごめんだし、この先自分が進む道なんて大した道ではないとは思うけれど、まだどこか諦めたくないという気持ちが結空の中では大きく存在していた。 「君はΩだし、いずれ誰かと番になるのだろうから、勉強はそんなに頑張らなくてもいいんじゃないですか」 「え……」 「ここだけの話、副作用が辛いからという理由で学生さんでも特定のパートナーを持つ人もいます」 「ではお大事に」という声を背中に受けて、結空は病室を出た。 Ωだから勉強は頑張らなくてもいいからパートナーを見つけて発情期をやり過ごせと言われたのだ。 医者の言うことは最もなのだろうが、そう言われたことがショックで悔し涙が滲む。 透や曽根崎と距離を置き、βの時の自分と変わらない人生を歩みたいと思っていた矢先のことだっただけに、この先どうすればいいのか、考えたところで答えは出るのか結空は途方に暮れた。

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