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第120話
発情期に入る前になると、やたらと甘い物が食べたくなったり、眠くなったりする。
発情は急激に体力を消耗するからなのだろう。少しでも身体がエネルギーを蓄えたくて食欲や睡眠欲を刺激するのだ。
ほんの少し、10分程度の仮眠を想定して眠ってしまった結空だったが、思っていた以上に深く眠ってしまったらしく、生徒会室の鍵が開けられた音にも気付くことはなかった。
───結空は夢を見ていた。
それはいつかの河川敷での出来事を思い起こさせるような夢だった。
結空は河原に押し倒されて、下半身を剥き出しにしている。
太陽が煌々と輝く真昼に、しかも野外で下だけ剥かれ、結空は腰を捩って嫌だとアピールするポーズをとっていた。
「あの日もこんな匂いしてたなぁ。こんな見た目でもちゃんとおちんちんついてるし可愛い。お尻の穴がひくひくしてる。挿れて欲しいんだろう」
「んんっ、ぃや」
「寝ぼけてるんだね。可愛いなぁ。このいやらしい匂いの穴に俺のを突っ込んでぐっちゃぐちゃにかき混ぜてやりたいよ」
(俺を押し倒してるのは誰?曽根崎?いや違う。曽根崎は俺に可愛いなんて言ったりしない。じゃあ透か?……透は力で俺を押し倒したりしない。じゃあ誰だ?)
「寄り道はダメって言ったのに。しかもこの部屋、何に使われてるか教えてあげただろう?わざわざこんなところへ人目を盗んでくるなんて。規則違反は罰するって話ししたよね?矢萩結空」
(何の事?それより俺の上からどいてくれ。重いんだ)
「あ、そういやあの時は人目も憚らないでフェラされてたよな。茂みに隠れて見えてないとでも思ってたのか?俺からは丸見えだったぞ。あぁ、それにしてもこの匂い。信じられないくらい甘ったるくていい匂いだ。うなじからフェロモンが出るんだとばかり思っていたが、この尻穴からも堪らなく犯したい匂いが出てる。知らなかった」
(フェラ?あれは曽根崎が無理やり……。っていうか見てたのかよ。悪趣味な奴だな)
「こんなにいい匂いなんだから、もしかして君の精液は甘いのかな?味見してみようか……。寄り道したお仕置きはその後でたっぷりとしてあげるからな」
「ひあんっ、んん……、やぁ……っ」
突如生温い何かに自分の性器が包まれたと感じ、眠っていた意識が急浮上しする。
結空はぱちりと目を開いた。
そこには結空の性器を頬張る片貝がいて、結空は目を見張った。
「せ、先生!!何してるんですか!?」
慌てふためく結空を見て片貝が口を性器から離す。反応の兆しを見せている性器が解放され、ふるんと揺れた。
「矢萩君こそこんなところで何してるの。真直ぐ帰りなさいと言った筈だよ」
「え……それとこれとは……」
「関係ないとは言わせないよ。淫乱Ωの矢萩結空」
片貝の様子がおかしい。αがヒートを起こす予兆のようにも感じられる。
表情はやや興奮しながら笑っているようだ。
もし、そんなことになってしまったら、暴走したαに結空は成す術もなく犯されてしまうだろう。
「か、片貝先生落ち着いてください……!もしかすると俺、少しフェロモン出始めてるから、先生当てられたのかも。この部屋出ればきっと正気に……」
そこまで言って結空は気付いた。どうして片貝はこの生徒会室まできたのだろうか。
ヤリ部屋だったと言っていたこの部屋に。教室を出たところで結空の手にあった鍵を見詰めていた片貝を思い出す。
片貝は結空がここに来ることを知っていたのだ。知りながら片貝はここにいる。となると、片貝の目的は結空ということになる。
αがΩを追い求める理由なんて一つしかない。
孕ませたいのだ。
「……っ、イヤだっ!!俺、あんたなんかとセックスしないからな!!」
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