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第126話

「とりあえず、どうするのこれ」 透が怒りの入り混じる呆れた何とも形容し難い顔で、片貝に向かって顎を突き出した。 曽根崎はハァと大きな溜息を吐いておもむろに片貝の両足を掴むと、部屋の中へ引き摺り歩き出す。 「月岡ドア閉めて鍵かけとけよ」 「わかった」 曽根崎は引き摺ってきた片貝を部屋の隅に投げ捨てるようにして雑に放り出すも片貝は目を覚ます気配が全くない。 心配になった結空は肩にかけられた透のワイシャツをぎゅっと握って片貝をじっと見詰めた。 「それ、生きてるの……?」 「ばーか。あれぐらいで死ぬ様なヤワなタマじゃねぇだろこいつ」 「そう……。それにしてもすぐ暴力振るうし、ほんと曽根崎って野蛮だな」 (曽根崎は……元気そう) 曽根崎にケガがないことに安堵しながら、結空は憎まれ口を叩く。 「うるせえ。お前その顔……こいつにヤられたのか。勝手に殴られてんじゃねぇぞ。それに、匂いも見た目も相当エロいことになってっけど、Mっ気でもあんのか。つうかそれ、我慢できんのかよ」 「別に……ほっとけば治まるし……多分」 そうは言っても、目の前の曽根崎からは強い魅惑的なαの香りが立ち上る。 片貝のことで興奮したからだろう。曽根崎も透も、いつもより強いフェロモンを身に纏っているのが結空にはわかった。 それに曽根崎の這うような視線が結空の身体を静まらせようとはしなかった。 結空が2人のフェロモンを間近で吸い込むと身体はじんじんと熱く火照り、尻から垂れる体液はとろとろと止まることなく溢れてくる。 透が慌ててドアを施錠し戻ってきた。心なしか呼吸が荒い。 「結空。そのままの身体じゃここから出してあげられないよ。またこの教育実習生みたいな輩がいないとも限らないし」 「はーまじキツイお前の匂い。ヤりてぇ」 「曽根崎!ここで結空を抱くわけにはいかないよ。ねぇ、クリスマスの時みたいに薬飲んでこなかったなんてことないよね?ちゃんとヒート抑制剤飲んでるよね?」 「うるせえな。飲んでるよ。けど、あんなん気休めだろ。こうして旨そうなΩが目の前にいりゃ理性なんて簡単に吹っ飛んじまう。それが運命の番って奴なんじゃねぇの」 「結空の運命の番は俺、自分だと思ってるけど。それより今は自分をちゃんと強く持って。ここで結空を襲ったら間違いなく嫌われるよ」 「だからっ!俺だって今自分と戦ってんだよ!うるせんだよ、このクソ王子!」 「な!クソ王子ってなに!?」 結空の目の前で曽根崎と透が言い争っている。 結空の身体を巡る理性と本能の攻防戦を繰り広げているらしいが、結空もまた息を荒くし身体を更に火照らせる。 自分の欲する2人が同じように自分を欲してくれて、バカみたいな言い争いをしているのがおかしくて、何故か涙が零れた。 「治まんないや……。どうすればいいの?透、曽根崎、触って……」 「結空……」 透が胸の前で我慢するように拳をぎゅっと握る横で、曽根崎が一歩前に出た。 「少し発散すりゃ治まんのかそれ」 「わかんない……。でも前に透に指でしてもらった時は少し楽になれた」 「ふうん……。お前は月岡にしてもらった方がいいのか?」 「え……」 「別に種付けできねぇならてめぇの発情反らすのなんて誰がやったって一緒だろ」 もしかして曽根崎は結空に気遣ってくれているのだろうか? 薄っすらとそんなことも思ったが、今はそれどころじゃなかった。とりあえず熱を発散して楽になりたい。 「バカなの曽根崎!一緒なわけないだろ!……ねぇ、もう我慢できないよぉ……」 半分泣きながら、結空が自分で身体を弄ろうと手を動かした瞬間、透が動いた。

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