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第129話
曽根崎の射精は結空よりも長く、精液の量も圧倒的に違う。
雄の匂いを濃厚に漂わせ、強い繁殖力を思わせる曽根崎の吐精に結空は後孔をひくひくとさせながら、ただうっとりと見詰めるばかりだ。
「結空、曽根崎のこと見過ぎ」
「え、……んっ」
透が嫉妬の滲む声音で結空を呼び、結空が振り向いたところですかさず結空の顎に手をかけた。
小さな結空の唇を、透が口で覆う。
途端に、甘く、温かい、優しい透の匂いが鼻の奥へと流れ込む。
(この匂いも好き……)
甘いキスを交わしながら結空はすうっと大きく透の匂いを吸い込んだ。
舌を軽く合わせるような優しいキスが心地よくて、気付けばとろんと微睡んでしまう程だった。
結空はソファーで横たわり、そのまま暫しの眠りについた。
目覚めた時にはもう窓の外は薄暗く、下校時刻などとっくに過ぎているだろうことがわかる。
ゆっくりと身体を起こすと、いつの間にか結空の身だしなみは整えられていて、透と曽根崎がパイプ椅子に腰かけながら結空を見ていた。
「ごめん、俺、寝てた……んだよな」
「おはよう結空」
「お前寝過ぎだよ。ったく、門閉まっちまったぞ」
「しょうがないよ曽根崎。でもほら、発散すれば少し結空のフェロモンも落ち着くでしょ。本格的な発情期だとこうはいかないけど、何かに煽られてこうなっちゃったんだろうね。とりあえず治まってよかった」
「……うん。二人ともありがとう。あの、あいつは?片貝先生」
「先生?あんなやつ先生なんて呼ぶ必要ないよ結空。呼び捨てで十分」
「だな。あの野郎俺に殴られたって上に報告すると息巻いてたが……。矢萩、てめーはどうすんだ。レイプ未遂だろこれ。警察に届けんのか?」
結空はこくりと頷いて、以前川原で無くしたと思っていた生徒手帳を片貝が持っていたことを二人に話した。
「えぇっ!それってストーカーってやつじゃないの!?……結空、ごめんね。いつも一緒にいたのに全然気付いてあげられなくて」
「透のせいじゃないよ。別に付きまとわれていたわけじゃないし」
「けど、お前に会うためにここの教習生になったんだろ」
「うん……」
「殺しときゃよかったか、あの野郎」
曽根崎の目が獰猛に鈍く光り、本気なのか冗談なのかよくわからない口調だ。
結空は曽根崎のそういう後先考えない衝動的な行動が苦手だし、どうしても好きになれない。
冷静で穏やかに落ち着いて行動できる透の性格と足して半分に割ったくらいが丁度良さそうだと思ってしまう。
「曽根崎、結空はそういうの好きじゃないよ」
「ちっ……うるせーな」
透が曽根崎を窘めると、曽根崎は舌打ちしてふいっとそっぽを向いた。
本能で動いているような野性的な強い男。内面もまた同じように荒々しいが、結空を思う気持ちは特別なようで性に合わない優しさを見せることもある。子供っぽくてぶっきらぼうで、愛情表現は不器用で。
でもそんな曽根崎に強く惹かれ、結空の身体は曽根崎を欲して欲情する。
それはどうしたって止められることではなかった。
(でも俺には無理だ。曽根崎の番にはなれない)
「そうだ……」
結空はここへ二人に来てもらった本来の目的を思い出した。
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