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第136話

片貝が結空の生徒手帳を盗み所持していた件については、一度は警察に突き出してやると息を巻いていた結空だったが、あの時曽根崎が片貝を伸したことで片貝の罪を精算してやろうという気になった結空の温情から、結局被害届は出さなかった。 しかし片貝のしたことは決して許されることではない。 かといって結空と透の力で片貝を辞めさせることも出来ず、もやもやと気持ちは晴れないまま教育実習期間中の片貝を野放しにしておく他ないのだろうかと静観することを覚悟した。 そんな時曽根崎が学校側に片貝についての処分を申し入れたところ、学校は即座に曽根崎の要求を飲み、片貝の実習期間はあと数日残っていたにも拘わらず翌日から姿を見ることはなくなったのだ。 ひとえに曽根崎と曽根崎の家の権力が後ろ盾となって事を動かしたのだろうと想定できた。 「曽根崎ってかっこいいよね」 「なんで?透の方がかっこいいと思うけど」 受験を間近に控え、追い込みをかけている透と結空は、結空の部屋の小さな丸テーブルでテキストやノートを広げ向かい合わせに座っている。 「結空にそう言われるとものすごく嬉しいけど……。でもやっぱり曽根崎には敵わないなぁって思う。あぁ弱気になってる場合じゃないよね。もっと頑張らなくちゃ」 「透だって十分かっこいいよ。曽根崎の大物感は半端じゃないけど、あれは曽根崎の家が凄いだけで別に曽根崎そのものに力があるわけじゃないだろ」 「うん……でもさぁ。あの時俺にも力があれば、あんな教育実習生ボコボコにしてやったのに」 「ぷっ」 「何笑ってんの、結空!」 「だって透の口から『ボコボコ』とか聞くと、似合わないから笑っちゃう」 「えー結空ひどい。俺だって結空の為に頑張りたいって思ってんのに」 「あははっ。でもちゃんと透に守られてるって感じてるよ俺。透といると安心する」 結空がそう言ったそばから、そわそわと落ち着かない様子を見せ始めた。 曽根崎の強いαの匂いが透の優しげなフェロモンとぶつかり合う。 一階でインターホンの鳴る音がした。 「もしかして曽根崎きた?」 「うん多分。どうしよう透、俺最近異様に匂いに敏感で、抑制剤飲んでるのにお尻がすぐぬるぬるになる。……したくなるかも」 2人と番になる以前は、個々のフェロモンに反応して発情期でもないのに尻を濡らしていた結空だったが、番となってからは2人のフェロモンを同時に嗅いだとき強く結空の体が反応するようになった。 もちろん個々のフェロモンにも反応するが透と曽根崎が同じ場所にいるだけで、どうしようもなく淫らな気持ちになってしまう。 「可愛い。こんな大人しそうな顔してエロい匂いぷんぷんさせて誘うんだもん。こっちだって我慢できるはずないよ」 シャープペンシルを握る結空の手を透が優しく包み込むようにして握る。 「結空、口開けて」 「は……ふ……」 結空の手を優しく握ったまま、透が腰を浮かせて結空の唇をかぷりと食む。 直接的に粘膜から感じとった透のαフェロモンが結空のΩを開花させた。 透の唇が離れたかと思うや否や、結空の視界が反転した。 透に後頭部を抱えられ、優しく押し倒された結空の目には、欲情と切なさをひた隠しにした顔で結空を見詰める透が写る。 「とおる……エッチしたい……」 結空が甘えを含んだ声でねだると、透の喉がコクリと音を立てて、喉仏が上下する。 「なんでそんなに可愛いの、結空」 透が結空に覆い被さろうと体を動かした直後、結空の部屋のドアがガチャリと音を立てて開いた。 「おい。抜け駆けすんなよ月岡」

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