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第141話

どうしてこんなに我慢の効かない身体なんだろう。 妊娠したらこの発情も治まるのだろうか。 「ッ、ん……っ、んっ、あぁっ……」 とぷっと左手に握られた竿の先端から精子が零れた。 しかし発情期の性欲は止まることを知らず、またすぐに張り詰める。 体力の続く限り、達しても達しても終わらない快楽は、苦痛そのものでもある。 それを緩和してくれるのは、番である透と曽根崎の愛情とセックスに他ならない。 「早く……はやく、きて……っ、とおる……あつし……んっ」 結空は焦燥感に駆り立てられながら、再び性器を扱く。後ろはより深く奥へ指を挿入しようと指を一本減らして突き上げる。 直接手で刺激を与えていても、指なんかじゃ細くて短くて全然物足りない。 もっと太くて長いものを挿れれば治まるのだろうかと結空の周辺に目を走らせた。 「あ……」 スーパーの買い物袋から、オレンジの人参が頭をひょっこり出していた。 あれなら先端は細くて挿れやすいし、徐々に太くなっていくシルエットが、自分を満足させてくれそうだと、身体を伸ばしぐちょぐちょに湿った手で掴み上げた。 「はぁっ……ごめんなさ…ぃ…、にんじんさん……鍋には入れてあげられない……」 結空の思考が尋常ではないことはもう明らかで、それは結空も自覚済みだった。 人参は鍋の具材として買ったのだ。それが今や性の道具にしか見えていない。 結空は玄関へ足を向けて、仰向けになり両脚を高く掲げて人参を股に軽く当てると、その先端にぬるぬるとした愛液を絡ませて後孔へ向けて滑らせていく。 自分からは見えないが、引っ掛かったところが後孔の入口だ。 「あ……ここ……、はっ……、っ……」 ゆっくりと人参を後孔の奥へと挿入する。ところが、先端が軽く入ったところでガチャリと目のまえのドアが開いた。 帰ってくることはわかってはいたものの、自慰に耽っていた結空としては突然の来訪に驚いて、思わず上半身を半分起こす。 「と、透っ、あ……、が、我慢できなくって……っ、んっ」 「ただいま、結空。敦も一緒だよ」 「帰ったぜ。人参でオナってんのか結空。さすが淫乱だな」 「ち、ちがっ……だって……2人が遅いから……っ、ぁッ」 濃いグレーのスーツ姿の透に、その後ろから黒いスーツの曽根崎が現れて、結空は自分のはしたなさに赤面する。Ωの発情期の淫乱体質は曽根崎だって熟知している筈なのに、未だにこうして意地悪な言い方をするのだ。 だがその声はとても柔らかく優しい。そして欲情を滲ませている。 「大丈夫だよ結空。俺達の帰りが遅かったんだから仕方ないよね。すぐ挿れてあげる」 そういうと透が青いチェックのネクタイをしゅるりと首から抜き取って襟元を緩めた。 茶色味を帯びた長襟足まである長めの髪がゆらりと揺れて、大人の色気を上乗せする。 大人の男の仕草が板につき、様になっている。結空はそれをうっとりとした眼差しで見詰めた。 「とおる……」 結空は握っていた人参を放り投げ、透がベルトを緩めるのをじっと見ている。 その隣で曽根崎も高校時代とはまるで違う、後ろに流した黒髪を解し、ジャケットとネクタイを脱ぎ捨てて結空を後ろから抱き締めた。 曽根崎の強いαの香り。吸い込むと心臓が壊れそうな程どきどきして、居てもたってもいられなくなる。 曽根崎の上に背を向けたまま座らされ、曽根崎のスラックス越しに既に猛った欲望を感じ、また尻からどっと愛液が迸る。 「はー……たまんね。このままケツに突っ込んでいいか?結空?」 「うん……」 以前より口調も時々優しい。大概セックスの時だけ。口の悪さは相変わらずだけど、声音がひどく優しかった。 そんな結空と曽根崎を透は仕方ないなと許容の眼差しで見てくれる。 いつの間にか下着の外で待ち構えていた曽根崎の血管の浮いた太い男根が結空の後孔へ宛がわれ、喜びと興奮で結空は腰をがくがくとさせながら下ろしていく。

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