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第2話

こんなに坂が辛いと思ったのは高校生になったばかりの坂に慣れていない最初の1学期だけだったから、随分久し振りの感覚だ。 一旦足を止め、大きく息を吐く。 最初の頃と比べても、今日の方が格段に辛い。 先刻まではペダルを漕ぐ脚が重かった。けれど今は、体全体が重い。 真夏でもないのに体が火照り、汗が額から流れ落ちる。 やばい……倒れそう……。 一瞬くらっと視界が揺れて、目眩を起こした自分に気付き、自転車を手放してその場にしゃがみ込んだ。 ドッ、ドッ、ドッ……と心拍数も上がっている。 ほんとに俺、どうしたんだろ……。 「……ですか?」 え、何? 頭上から声を掛けられていたことに気付き、顔を上げる。 そこには見知らぬ同じ高校の制服を着た男子生徒が立っていた。 「大丈夫ですか?」 「あ、あぁ、大丈夫。少し休めば治ると思う」 「でも具合相当悪そう。僕、あなたのこと負ぶっていきましょうか」 「や、いいよ、ほんと大丈夫だから。ありがとう」 結空がそう言うと、その男子生徒は何故か顔を赤らめて、「わかりました」と頷き、彼もまた、額に滲む汗を手の甲で拭いその場を後にした。 その後ろ姿をぼうっと眺める。 その時ひゅうっと風が吹き、風に乗って嗅いだことのない匂いが鼻腔に流れ込み、結空は顔をしかめた。 あいつ……αだ。 どうしてそんなことを思ったのか、結空は頭を横に振る。 なんであいつがαだなんて……。なんとなく、そう思っただけ? 自分でもよくわからない感覚に首を傾げる。 そのまま動かず5分もすると少し気分が良くなって、近くにあった自販機で水を買い乾いた口を湿らせ、喉を潤した。 相変わらず体は怠いままだったが、なんとか坂を上りきり、風を切って坂を下る。 さっきのはなんだったんだ? 初めての感覚だった。 不安に見舞われたが、少しの怠さを残して、他に体の異常は感じなかったので、通常通り登校した。

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