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第3話
駐輪場に自転車を停め、昇降口に向かって歩く。
いつもと同じはずなのに、何故だか今日は他の生徒の視線がやけに気になった。
気のせい?
……もしかして俺の制服に何か付いてるとか? さっき道路脇にしゃがみ込んだから、ズボンに何かくっついたとか?
きょろきょろと身に付けている制服にも目を走らせたが、特に目立つ汚れもない。
何か変だと思いながら下足箱で靴を履き替える。すると後ろから声を掛けられ、結空はくるっと振り向いた。
「おはよう、結空」
「はよ」
小学校からの幼なじみ、隣のクラスの月岡透(ツキオカ トオル)だ。透は背が高く、優しげな甘い顔立ちと柔らかい物腰で人気があり、勉強も運動も出来てとにかくもてる。
顔も身体も中の中である結空からすると、羨ましい限りだが、透は世に期待されるαタイプだ。色々期待され過ぎるというのも難儀だなぁと思ってしまう。
「今日はいつもより遅いね。俺と同じ時間に登校だなんて」
にこっと微笑む姿はまるでお伽の国の王子のようだ。
「あー、うん。途中でちょっと気持ち悪くなって、少し休んできた」
「大丈夫なの?」
「うん。ちょっと怠いけど、平気」
「そう」
その時隣に立った透が結空の襟首に顔を寄せ、くんと鼻を鳴らした。
「何してんだよ透。もしかして俺臭い?さっきだらだらに汗かいたから」
「汗?そんなだらだらになるほど暑くないと思うけど……。香水とか……結空がつけるわけないか」
「なんだよそれ。確かに香水はつけてないけど。決めつけなくてもいいだろ。透はいいよなぁ、香水なんかつけなくたって汗臭さとは無縁みたいだし、可愛い子ばっかり選り取り見取りで」
俺なんかどうせまだ色気付いてないただのDTだよ、リア充めと内心毒付いた。
皮肉ったらしく言ってやったつもりなのに、透は苦笑いするだけだった。
透が好かれる所以はそんな優しい性格にもあるのだろう。
結空と透は一緒に2年生の教室がある3階へと階段で向かう。
やっぱり怠い。
クラスが違うので、自分の教室手前で透に手を振った。
「じゃなー」
「ちょっと待って結空」
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