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Ⅵ 音の名前④
五線譜の上
音符をなぞる指が止まった。
「これは……」
最後の音が数個
原曲と違っている。
「気づかれましたか?」
少年が訝しげに睫毛を伏せた。
「なぜ、最後の音だけショパンと変えたのか……僕には音楽の才がなく分かりません。
祖父も聞いていないそうです」
音を拾う。
ファ ラ シ……休符、ラ………
音階をアルファベット表記にすると……
F A B、A
ファビア
『ファビア』と読めはしないか。
「私だ」
最後の一小節は、私の名だ。
お前は私の名を呼んでいた。
今も呼んでくれている。
音の中に、お前の声が聞こえる。
お前の声が生きている。
この曲の中で、私と共に生きてくれる事をお前は………
望んでくれたんだな。
お前の心が奏でる声
ピアノの音色が響く。
私の胸に
ポーランドの丘に
お前が私を呼んでいる。
私の胸の中に生きる、お前の声が……
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